第32話 浄化魔法
毒竜からは若干の毒を感じる。
これを直に吸うと、呼吸困難に陥る可能性があるため、充分に気をつけなければいけない。
「やっぱり、これが原因でしたか……」
私の仮説はやはり、正しかった。
毒竜から漏れ出た毒素が、川の水に溶け出している。
水で薄まっているとはいえ、体内に入れたら体調不良になるのも当然だろう。
特に、毒竜の毒は体内に蓄積されていくのが特徴である。
尿や汗から体内から出る事がない為、とても厄介な代物だ。
「とりあえず、これを浄化させる必要がありますね」
原因が特定できたところで私がやることは決まっている。
水源に流れ込んでいる、毒素を浄化させることである。
「浄化、出来るんですか?」
ライムントさんが後ろから声をかけてくる。
「この程度なら私でもいけると思います」
みた感じ、毒素はめちゃくちゃ濃いというわけではない。
浄化の魔法は得意ではないが、やれないことはないだろう。
『光の精霊に願い奉る。浄化の加護を』
浄化の魔法は癒しの魔法と近いところにある。
私は、周囲一体を浄化した。
すると、毒竜から漏れ出ていた毒素はピタリと止まった。
「もう、マスクを外して大丈夫ですよ」
そう言って、私は酸素マクスを外した。
その様子を見て騎士団の人たちも同様にマスクを外した。
「さすがですね。これだけの規模の浄化をやってのけるとは」
ライムントさんは感心した様子でいった。
「ありがとうございます」
これで、あと半日もすれば水は通常の浄水で飲めるまで回復することだろう。
「では、街に戻りましょう」
原因は特定する事ができた。
その原因も今、取り除いた。
しかし、私にはまだやるべき事が残っている。
毒竜の毒を浄化する薬を作らなければいけない。
今は、魔法で症状を抑え込んでいるだけなので、いつまで持つかはわからない。
街に帰ったら早速取り掛かるとしよう。
「分かりました」
私は、ライムントさんたちと共に来た道を引き返す。
足元はいいとは言えないので、気をつけながら進んでいく。
行きよりは早く街に到着した。
街に到着した頃には空が茜色に染まり始めていた。
今日も領主様の意向で領主邸に泊めてくれることになっている。
さすがに悪いとは言ったのだが、賑やかな方が領主様も嬉しいとのことだった。
街の中心街を抜けて領主邸へと入る。
「戻りました」
「おかえりなさい」
領主様はリビングのソファーで仕事をしていた。
「こちらでお仕事ですか?」
「こっちでやった方がサボらんでな」
自嘲するような笑みを浮かべながら領主様は言った。
「サクラ先生の方はいかがでしたか?」
領主様はメガネを外すと、テーブルの上に置いた。
「風土病の原因は突き止めました」
「もうですか。さすがは国王陛下のお墨付きだ。それで、原因は?」
「毒竜の毒が飲料水に流れ出た事が原因でした。多く摂取した人が重症化していると思われます」
「なるほど。そんなところに原因があったのか……」
この原因を探り当てるのは専門家でなければ難しいだろう。
「水はもう大丈夫なのか?」
「はい。私が浄化の魔法で飲んでも問題ない所まで浄化しました」
「感謝する。本当にありがとう」
領主様は私に頭を下げた。
「頭を上げてください。まだ、問題は残っています」
「感染者の治療だな」
「その通りです。毒竜の毒を浄化する薬を作ります」
「できますのか?」
「半日もあれば」
私の中で、薬の調合方法の答えは既に出ていた。
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