第21話 医療のあり方

 翌日、私はいつもと変わらない時間に目が覚めた。

窓を開けると、朝の空気が部屋に流れ込んでくる。


 宮廷魔術師としての生活も徐々に慣れてきた。

住めば都とはよく言ったものだと思う。


 その時、部屋をノックする音が聞こえた。


「サクラさん、お迎えに参りました」


 扉の向こうからライムントの声が飛んできた。


「はーい、今行きます!」


 私は白衣を羽織ると、部屋を出た。


「おはようございます。サクラさん」

「おはようございます。いつもありがとうございます」

「いえ、陛下から頼まれましたし、他の者にサクラさんを任せたくは無いので」


 ちょっと後半はよくわからないが、まあいいだろう。


「では、行きましょうか。ご案内します」

「はい!」


 病院に勤務すると言うのは私の憧れでもあった。

週3日とはいえ、医師として人を救えるのはとても嬉しいことだ。


 王宮を出て、王都の街をしばらく歩く。

すると、正面に大きな建物が見えてきた。


「ここです」

「すごく大きいですね」


 病院と言われなければわからないほどに立派な建物であった。


「王都では1番大きな病院だと思いますよ。院長先生には話を通してあるらしいですから行きましょうか」


 病院内に入ると、これまた病院とは思えないほど豪華な内装になっている。

患者さんも結構いるみたいだ。

身なりから察するに、貴族階級の人が多いように感じる。


「やっぱり、貴族の方が多いんですね」

「そうですね。庶民からしたら診察費用も安いものではありませんから」

「なるほど……」


 私は、そんな医療制度を変えていかねばならないと思っている。

医療は人類皆、平等に受ける権利を有しているものだ。


「ここが院長室です。私の役目はここまでです」


 そう言うと、ライムントさんは一歩引いた。


「ありがとうございました」


 私は、ライムントにお礼を言うと、院長室の扉をノックした。


「サクラ・オーラルと申します」

「入ってください」


 中から渋い声が飛んできた。


「失礼いたします」


 私は扉を開けると、ゆっくりと中に入った。


「お待ちしておりました。どうぞ、お座りください」


 白衣を着た物腰柔らかそうな初老の男性がソファーに座るように促した。


「失礼します」


 私は、部屋の中央付近にあるソファーに腰を下ろした。


「ようこそおいで下さいました。私はここの病院長を務めております、テオバルトと申します。陛下のご推薦とのことで、優秀な医師だと伺っております」

「ありがとうございます」

「まずは、週3で入ってもらいます。サクラさんには病棟勤務と急患の対応をいて頂きたい。私は、医療は全ての人の為にあると思っています」


 院長先生はいい人だと陛下がおっしゃっていたが、どうやら本当らしい。

医療に信念がある医者はいい医者なのである。


「分かりました。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。これ、サクラ先生の職員証です。胸の位置につけておいてください」


 私は院長からもらった職員証を白衣の胸ポケットの位置につけた。

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