第20話 医師である為に

 陛下からの提案は予想のできる範囲内ではあった。

宮廷魔術師としての仕事はそれほど過酷という訳でもない。


「まずは週3日ほどで働いてはくれないだろうか? もちろん、給料はきちんと支払いする」

「構いませんよ。私は医師としても患者さんの力になりたいと思っていますから」

「それは、ありがとう。すごく助かるよ」


 私は医師としてはまだまだ未熟なところがある。

経験していくことは医師としては確実にプラスとなる。


「私の直轄する病院だから貴族なども来るが、一般の国民も使える病院だ。院長も良い人だから心配することはないぞ」


 今や、サクラの医療技術は国をもしても欲しい技術となってきている。

癒しの魔法の適正があっても医療の知識が無くて、その力を持て余しているものも多い。


 それが、サクラの場合は高い医療技術に加えて高度な魔法も使えるときた。

こんな優秀な人材は滅多に居ない。

国王としてはこんな人材をみすみす手放す訳には行かないということだ。


「では、早速で悪いんだが、明日から行ってもらえるか? 案内はライムント辺りにやらせよう」

「分かりました。大丈夫です」


 私は大丈夫だが、ライムントは大丈夫なのだろかと思ってきてしまう。

あれでも王国の副騎士団長というそれなりに偉い立場なのだが。


「私からの話は以上だ。給料やシフトについての話は院長から聞いてくれ」

「承知しました。あの、私からも一つよろしいでしょうか?」

「なんだね? 遠慮なく言ってくれたまえ」


 陛下は優しい声で言った。


「王宮図書館の閲覧許可を頂けないでしょうか? 正直、部屋にある本はこのままだとすぐに読み切ってしまいそうで……」

「なんだ、そんなことか。ちょっとまっていなさい」


 そいうと、陛下は従者に何やら指示を出した。

そして、その従者は応接間を出ると、しばらくして一枚の紙を手にして戻ってきた。


「陛下、お待たせいたしました」

「うむ。感謝する」


 そう言うと陛下は、懐から一本のペンを取り出してサラサラと紙に書き込んだ。


「閲覧許可証だ。これで大抵の本は読めるようになるぞ」

「ありがとうございます。大抵のということはこれで読めない本もあるのでしょうか?」

「そうだな。禁忌とされている魔術書なんかはこれだと読めないな」


 禁忌や高位な魔術や国益に関するような本は閲覧規制がされているのである。

まあ、それほど高位な魔術を必要に迫られることはほとんど無いので、閲覧規制がされていても一般的に生きていたら問題はない。


「その本を読むにはどうすれば良いんですか?」

「その閲覧許可証とは別に、宮廷魔術師長の推薦も必要になる。まあ、サクラくんなら師長も推薦するだろうから、必要になったら言ってくれ」

「分かりました。ありがとうございます」


 宮廷魔術師長というと、私の直属の上司にあたる。

私は、初日に軽く挨拶をしたが、それからはバタバタしていて中々お会いする機会が取れていなかった。


 師長は氷系統の魔法が得意だったと記憶してる。

ぜひ、ゆっくりお話を聞いて見たいと思ってはいる。


「じゃあ、サクラくんの活躍を期待しているよ」

「ご期待に沿えるように頑張ります。では、私はこれで失礼します」


 私は貰った、許可証をポケットに入れると、応接間を後にした。

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