第3話 王都を目指して
3日後、王宮から返書が届いた。
内容としてはすぐにでもサクラの席を用意するので、王宮へと来て欲しいというものであった。
「お父様。私、行きます」
「分かった。少し寂しくなるが、これもサクラの為だ。馬車を用意させるからサクラの方も準備をしておいてくれ」
父上はすぐに手配を進めてくれた。
明日にはメイル王国の王都に向かって出発することができるだろう。
王都までは丸一日かかる。
比較的近い距離に王都があるのが救いである。
私は旅の準備と向こうに着いてから必要になりそうなものを適当にバッグに詰めていく。
生まれた時からずっと住んでいたこの街と屋敷を離れるのは寂しさも当然ある。
しかし、それよりも新しい生活の期待の部分が大きかった。
「今日は早めに休んだ方がいいかもしれませんね」
明日は早朝から出発する予定である。
普通に考えたらいつもより早めに就寝するべきだろう。
準備を終えると、すでに日は傾いていた。
そこから夕食を済ませる。
「サクラ、馬車を手配しておいた。明日の朝から出発するといい」
夕食が終わったタイミングで父上が言ってくれた。
「分かりました。ありがとうございます」
そう伝えると、私は自分の寝室に向かった。
普段から考えたまだ随分と早い時間だ。
しかし、慣れない旅のことを考えると睡眠はきちんと取っておいくに越したことはない。
ベッドに入っても時間が早いためか、新生活への不安や期待からか中々寝付くことができなかった。
それでもベッドで横になり目を閉じていると1時間ほどで意識を手放した。
♢
翌朝、いつもより随分と早い時間に従者の手によって起こされた。
「サクラ様、おはようございます」
「おはようござます」
私はベッドから体を起こした。
そこからきちんと朝食を取る。
朝食は活力の源なので大事にしている。
「おはよう。サクラ」
「おはようございます。お父様」
「庭に馬車が停まってるからな。あの馬車を使いなさい」
窓から外を眺めると、確かに一台の馬車が停車していた。
馬車の側面には我がオーラル家の家紋が描かれていた。
「では、行って参ります」
私は屋敷の玄関から出ると、父上に軽く頭を下げた。
「サクラは私の自慢の娘だ。気をつけて行ってくるんだぞ。私はいつでもこの地で待っているからな」
父上が私の肩をポンポンと叩いた。
本当は泣きたいくらい寂しいくせに娘の手前泣く訳にはいかないとでも思っているのだろう。
何年、父上の娘をやっていると思っているのだ。
女は男より勘が鋭いんですよ?
「はい。では、皆さんもお世話になりました。行ってきます」
うちの使用人の人たちにも軽く頭を下げて挨拶をする。
「「「「行ってらっしゃいませ。お嬢様」」」」
使用人たちが声を揃えて言った。
「母上も行って参ります」
「気をつけるのよ。お父さんは寂しがってるけど気にしないでね」
母上は優しい声で口にした。
これが母の余裕というやつだろうか。
「道中の御者を務めさせて頂きます。ラルフと申します。よろしくお願いいたします」
「サクラ・オーラルです。よろしくお願いします」
「では、参りましょうか」
ラルフが手を貸してくれ、私は馬車に乗り込んだ。
そして、ラルフが御者台の方に周る。
「出発いたします」
ラルフの声で馬車はゆっくりと進み始めた。
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