「お前の嫉妬に耐えられない」と婚約破棄された天才医療魔術師の医療革命〜宮廷医療魔術師に推薦されて、何故か王国の次期騎士団長様に守られる生活が始まりました〜
津ヶ谷
第1話 私より幼馴染が大事なんですね
「俺たち、婚約を破棄しないか?」
私の婚約者であるウィンから唐突に切り出された。
「急にどうしんたのですか? 私、何かしましたか?」
「その、君の嫉妬に耐えられないんだ……」
ウィンは頭を抱えるようにして言った。
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
私は思わず大きな声が出てしまった。
私が嫉妬しているですって?
自分がやっていることを考えてみた方がいいのではないだろうか。
♢
「すまん。今日のデート延期してほしい」
「また……ですか」
これで何回目の出来事だろうか。
理由はもはや聞かなくてもわかる。
「モミジの看病中なんだ。出血多量で命に関わるかもしれないんだ」
せっかく彼の家まで迎えに来たのに何度このパターンを喰らえばいいのだろうか。
私は大きなため息が漏れた。
「ウィンさん、これで何度目のドタキャンだと思っているの? モミジさんがいくら幼馴染だからといって特別扱いはやめてください!」
「言いたいことは分かります。だが、鼻から血が出ているんだ! モミジも悲鳴を上げて家に飛び込んできたんだ。僕が看病してあげなくては……」
鼻血か……
もちろん状況にはよるだろうが、多少の鼻血で命に関わるわけがないだろう。
おそらく、モミジさんのことだから大袈裟に騒いでいるだけであろう。
にしてもどうなのだろうか。
婚約者がいる男が別の女を家に上げるというのは。
ウィンにも問題があるが、モミジにも問題はある。
ウィンの婚約者は私だということは知っているはずである。
それにも関わらず、ウィンの家に平気で上がりこむのはどうか通り思う。
「じゃあ、止血したらデートに行きましょう。それで解決です!」
「ダメだ! あまりにも危険すぎる。もし、一時的に血が止まった止まったしてもまた傷口が開いてしまうかもしれない」
ウィンの訳のわからない理屈がはじまった。
私も、こんな男と婚約してしまっことを情け無なく思い始めた。
「来年には結婚予定なのよ? 私のことも少しは気にかけてくれます?」
「もちろんそのつもりだ。サクラのことも大切に思っている」
これ上っ面だけの言葉にも思える軽い言葉だ。
もし、結婚して一緒に暮らし始めたらモミジのように大切にしてくれるかもしれないという淡い期待も無いことは無い。
「じゃあ、今日は帰るわ。でも、モミジさんを家に上げるのは少し控えていただけるかしら?」
「僕がモミジと浮気をするとか考えているのか? モミジは本当の妹とみたいなもんだから心配はいらないさ」
出たぁ!
クズな男が1番いいそうな言葉。
『あいつはただの妹みたいな感じ』
冗談じゃない!
血が繋がっていないのだから浮気をしないという保証はない。
少しの疑念を覚えながらも扉を閉めた。
そのまま馬車に戻ろうとすると従者は不思議そうな表情を浮かべていた。
「お嬢様、またドタキャンでございますか? また、例の女で?」
「ええ、そうみたいね。ウィンは神経質だしモミジさんは大袈裟なのよ」
私たちの事情を知っている従者は少し呆れたような表情を浮かべて言った。
「今回の原因はなんでございましたか?」
「鼻血ですわ」
「前回は蚊に刺されてキャンセル。その前はしゃっくりでしたね」
♢
もう、私も限界だった。
そんな時にこの婚約破棄を言い渡された。
なんか向こうから言い渡されるのはなんか癪ではあるが、ちょうどいタイミングであったかもしれない。
お父様には私からちゃんと説明すれば分かってくれるだろう。
これからしばらくは自由に過ごそうと思うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます