ケモナーの別視点!
とあるウルフゾンビの一日
彼の種族名はウルフゾンビ。
今回は彼のとある一日を紹介しよう。
彼の朝は早い……というか彼に朝という概念はない。
アンデットである彼にとっては睡眠というのは無駄なものである。何しろ睡眠を取らなくても活動出来るのだから。
そんな彼の趣味はパトロールという名の徘徊だ。森に入り込んでくる
「よっし! この調子でやる……ぞ……」
見つけた、否、見つけてしまった。仲間のゾンビに炎を放っている人間を。
「グルル……」
人間を見つけた彼がまず最初になすべき事はもちろん敵対行動だ。
「モフモフの……アンデッド……! あ……あ……だめ! やっぱり倒せない! さあおいで!私の愛で包み込んであげるから……!」
威嚇した後の人間の行動はウルフゾンビにとっても予想外であった。普通は逃げるか襲いかかって来るかの二択なのだが何故か止まってぶつぶつ喋り出したのだ。
「これはこれで新感覚……!」
何を言っているのだろう。ウルフゾンビには目の前の人間の思考を理解するに至らなかった。というよりは何故だか理解したくなかった。それが何故かも分からないが本能が恐怖を感じていたのだ。
「ガウッ!」
しかし構わずに襲いかかる。それが彼の使命である限り。
「おいで!」
襲いかかったというのに腕を広げてまるで待ってました!とでもいうかのように何の抵抗もしない人間。
ウルフゾンビは人間に噛みつきダメージを与える。
しかし人間は一瞬痛そうな顔をした後も攻撃してこないで固まっていた。
「っ! 例えシステムが貴方を獣だと認めなくても……! 私は貴方を獣だと認めるわ! 獣を獣たらせるのは……世界なんかじゃない、定義なんかじゃない……! 人が獣を想う気持ちよ!」
そして訳のわからないことを言い出した。おそらく目の前の人間は生物として必要な何かが欠損しているのだろう。彼にとってはそう思えるほどに異常だったのだ。
目の前の人間がウルフゾンビの体を触る。もちろんウルフゾンビはアンデッドであるため、触られたところから崩れていった。
それを見た人間は少し苦しそうな、辛そうな表情をして、ウルフゾンビからやだか人離れていく、
「ワウッ!」
ウルフゾンビに背中を向けた。これはこの人間を倒すチャンスだ!そう考えたウルフゾンビは背を向けた女に再び襲いかかっていった。
しかし、それは間違いであった。彼のその行動は、目の前にいる異常の塊のような人間に新たな考えを与えてしまったのだ。
「そう……よね、私ったら何をしようと……ごめんね、貴方を見捨てようとしてた……崩れた体を見て現実から逃げてた……声も出さずに心の中で、強く生きてって……馬鹿みたい! 獣を殺さない縛り? ふざけるな! 好きだからこそ……!好きだからこそ助ける為に殺さなければならない時もある! それこそがケモナーの宿願! ケモナーの使命! ありがとね……大事なことに気づかせてくれて……せめて安らかに【スリープ】」
そう、獣だとしても殺す。なによりも獣のためにという考えを……ちなみに人間のこれは全てエゴである。可哀想だから殺す。可哀想だから助ける、助けるために殺すというのは全て人間の基準により決められたエゴに過ぎない。正直魔物や動物からしたらたまったものではないだろう。このウルフゾンビもそうだ。人間の勝手なエゴによりここで命を落とすことになってしまった。
魔法をかけられたウルフゾンビの思考は途切れ、二度と覚めることはなかったという……
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