第25話 静寂の森
オレ達は昼飯を買ってから、調査の為に森へ向かった。
同行の指輪をしてから、異常なほどの食事量は人より少し多く食べるくらいにまで収まったから金と時間の節約をすることが出来る。能力値に腹の容量も含まれているんだろうか。
途中、シアスタがどうしてレベルがそんなに高いのかとか、アステルに飛ばされる前は何をしていたとか聞いてきたが、正直に話しても信じてくれなかった。
オレ達の異常さがあっても、異世界から来たというのは常軌を逸した話らしい。多分オレだったら信じちゃうけどなぁ。
一昨日と同じ道順で歩くと、森の前にテントが張られていたから、森に入る前にそちらに寄らせてもらった。
「どーもー、もしかして調査隊のテント?」
テントは骨組みと天幕だけの簡単なつくりで、同じ格好をしている男2人と女1人が机の上の資料とにらめっこしていた。
テントの下には机とその上には何やら色々な紙が置かれていて、いかにも何かを調査していますよ風だったから、多分調査隊で合ってるはず。
「はい、そうですよ」
一人の男がオレの質問に答えてくれた。
「やっぱり。オレ達依頼されて調査の手伝いをしに来た冒険者だ。オレはリーダーのイキョウ、よろしく」
「こちらこそよろしくおねがいします」
男が、冒険者と聞いてオレ達の胸元にあるプレートを見てくる。
「5等級と6等級のパーティですか?」
「そうです。<インフィニ・ティー>って言います。シアスタです、よろしくお願いします」
シアスタが自信満々に答えてムフーっとしている。
「よろしくねお嬢ちゃん。…ちょっとリーダーさんとお話があるから借りるね」
「はい」
オレは男の調査隊員に手招きされてソーエンとシアスタから離れた場所に移動する。
「あなた、あんなに小さい子を連れて今の森に入る気ですか。あなた達では危険ですよ!!依頼したギルド職員は何を考えてるんだ」
調査隊員は少し怒り気味にオレに忠告をしてくる。
「心配してくれるのはありがたいけど大丈夫大丈夫。それに依頼してきたのはカフスだ」
「様を付けてください。スノーケア様が直々に?」
「あ、うん、そのカフス様が直々に」
こんなところで無駄な争いをしたくは無いから、とりあえず様を付けておこう。
「なるほど…何か特殊な技能をお持ちなのですね」
勝手に解釈をし始めたからそのまま身を任せよう。
「そんなところ。それにあの子は氷の精霊だから大丈夫」
「言われて見れば確かに……。すみませんこちらの早とちりでした」
精霊の信頼度半端ないな。
「いいっていいって、オレ達を心配してくれたんだろ?」
「はい。今の森はカフス様によって立ち入りの制限が設けられているくらい、何が起こるか分からなくて危険ですから…つい」
立ち入りの制限? なら元からファングボアの討伐は無理だったのか。
調査員の誤解が解けたところで、テントに戻って今の調査状況を聞かせてもらった。
土が盛られた謎の山、巨大な何かが通ったように木が薙ぎ倒されている場所、森全体が静かで全然モンスターを見かけない以外は今のところ何も分かっていないらしい。前二つは心当たりがあるけど、カフスが力の事は内緒って言ってたし言えないなーしょうがないなー。
他のパーティも調査に入っているらしく、早速オレ達も取り掛かることにした。
森に入ったら<生命感知>を定期的に使い、オレはスキルで、シアスタは魔法の反応で、ソーエンは目で、それぞれ怪しいものを探す。
「うぅ、こう静かだと不気味です…」
森に入ってしばらく経つが、モンスターには一回も出会っていない。<生命感知>で木の上や遠くに隠れている姿は見えるが、なんと言うか、怯えているように感じる。ゲームでは感じたことのなかった感覚だ。
途中昼飯を食って休憩し、捜索を再開したがこの日は何も見つからず一日目の調査は終わった。
二日目は朝から調査に向かうべく、朝食をギルドの食堂で済ませてすぐ森へ向かった。
昨日と同じく調査員に挨拶してから森へ入ろうと思い、テントへ行くと平和の旗印の面々が居たのでお互い情報交換をしたが、やっぱりお互い分からず仕舞いだ。
効率を考え、平和の旗印とは別々に森の探索を行ったけど、結局二日目も何も見つけることは出来ずに終わった。
そして最終日の三日目。昨日と同じようにギルドで朝食を取って森へ向かった。
実は何もなかったんじゃないかって三人で話しながらテントに挨拶をしに行こうとすると、40人くらいだろうか? 調査員や冒険者が大勢集まっていた。
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