クララさま、「マイ・ベスト短編の里」へのご寄稿ありがとうございました。しかも今回は新作です!
真っ白な色彩と澄んだ風の音がまっさらです。ラストでは遠い遠い過去への郷愁と、今日と言う日が同じ様に遠い未来へと続いて行く新たな出発点だという希望がさわやかに響いて来ました。それに、「この世界にたった一つのもの」同様、文章が良いですね。同じくらい筆の立つ方は他にも少なくないでしょうが、クララさまの文章はしっとりと柔らかくてとても読みやすいのです。
ただ、この作品、きれいすぎるというか、感覚的な美しさにやや頼り過ぎているのでは?この長さですと、友未的にはもう少しストーリー的なメリハリが欲しい気もしました。
表現的にひっかかった文章や、内容的にすっきりつかみきれなかった(これは友未自身の読解力不足のせいかも)点が二、三ございます。
1.前の方で、「僕はその人をじっと見つめた。いつもよりまだ波の音も風の音も大きい。」とありますが、音声認識解読装置を使わなくても、大きいか小さいかはわかるのでしょうか?
2.やや後の方、「フレイヤさんの薔薇色の唇が伝えてくれた言葉に感動しかなかった。」は何か脱字があるように思います。「は」でしょうか?
3.「キルギリヤ」と「ギジェルモ=フィンバーティアス」は同じ物なのでしょうか?関係性がつかみきれませんでした。
余談ですが、ただ今、我流でグラナドスの「スペイン舞曲集」に挑戦中です。「オリエンタル」「ビリャネスカ」「アンダルーサ」が弾きたいのですが、どれも友未のレベルをだいぶ越えています!
作者からの返信
友未さま、
細かくいろいろとありがとうございます。
今回の作品は別サイトのコンテスト「耳で聴きたい物語」に合わせて作ったものです。実はTwitterの方ではあれこれ書きましたが、これは先天性高度難聴の親友との時間の中で私が「音」というものについて考えたもの、その未来への希望を物語にしたものです。なので無音の世界が根底にあって、言葉による理解よりも感覚を優先した感じで書き進めました。感覚的な美しさによってしまったのはそのせいかもしれません。まあ、そんな裏話をしてしまうとなんか興ざめですが……。
そんなわけで希望やら夢やらを詰め込みましたので、はっきり言って毒はないですね。しかし世の中毒だらけなので(すでに主人公無音の世界の住人ですし)、ここはもう潔いほどに美しさを追求してやろうと、天邪鬼が奮起した結果です。独り善がりですが、まあそれもありかと。
疑問点ですが……
1,これは毎日海を見ているギルだからこその経験値です。風の強さ、波の砕け方、空の色。日々を過ごす積み重ねからギルには聞こえなくてもわかるものがある。もちろんその経験の中には装置を使って聞いて理解したものを含まれます、すり合わせというか、答え合わせというか。そういうことで、彼はこの日の音を理解しているのです。
2,については同感です。「は」を入れればよりしっくりくるような気もします。ありがとうございます。
3,については、そうですね。はっきりとは書いておりませんので迷われる方も多いかもしれませんね。商品としての基準値に満たなかった「キルギリヤ」とギルが拾ったカケラである「ギジェルモ=フィンバーティアス」はほぼ同じ金属含有量を示しています。近しいものだと言えるでしょう。しかしもしかしたら同じものかもしれません。「続く」はないのですが、続いていく何か(それを明らかにする過程とか未来とか)を感じてもらいたいという小賢しい技です(笑)。同じものでなくても、何かにこだわり過ぎず、可能性を元にして広がっていく未来を想像してもらえるだろうし、もし同じものならという気持ちが勝れば、魚人族とはるか遠い銀河の向こうの星の物語ができそうですしね。ずるい奴です、すいません。
そうそう、前回はお返事する場所もなくて尻切れとんぼでしたが、私、もっぱら聞き専でして。最後に弾いたのは映画を観て感動したショパンの遺作のワルツ第19番。と言っても我流のなんちゃってです。普段はグレン・グールドを並べてどっぷり浸っております。執筆するときには「平均律クラヴィーア」は欠かせません。友未さまは素晴らしいですね。グラナドスの「スペイン舞曲集」私も好きです。ぜひぜひものしてください!
で、この際私も余談ですが、今更ながら「バビロン行きの夜行列車」を購入しました。ゆるゆる読んでみようと思っています。
随分と長い内容になってしまってすいません。しかしいろいろとまとめられて、自分的にも良い機会になりました。感謝申し上げます。
こんにちは。
声から始まる「音」、そして「石」にストーリーが託されて、託されて最後にはふたりが遥か銀河の向こうに向かっていく壮大なストーリー。心をぐっとつかまれました。うつくしさのなかにも、金属含有量といった科学的なギミックが生かされていて感服です。それまでのギルの閉じられていたであろう世界が広がり、透き通っていく過程がとても素晴らしかったです。
作者からの返信
こんにちは。
コメントありがとうございます。
レビューもいただいて感激です。
「閉じられていたであろう世界が広がり、透き通っていく過程」
心に沁みました。報われたと思いました。
この物語のテーマの一つでもある音の可能性、
これは主人公と同じ体の特徴を持つ親友との時間の中で
私がずっと考えてきたことを形にしたものです。
音楽療法・波長・周波数、興味深いテーマであり、切なる願いです。
あとは仕事柄、石に触れる機会が多いのでどうしても
その辺りこだわってしまいたくなるという(SFに地味に繋がってよかった!)。
短編ですから、壮大な物語の始まりを告げるもの、
その先を予感させるものであってほしいと願いながら書きました。
楽しんでいただけてよかったです。