第49話 夏休みの課題を一緒に?
夏休み二日目。
月野さんと日七瀬さんがやってきたので、三人で夏休みの課題をすることになった。
リビングに大きめのローテーブルを持ってきて、課題のプリントや教科書を広げる。準備は万端だ。
「じゃあ、課題をしようか」
「じゃあ、私は春彦君の右隣りを……」
「え?」
そう言ってすばやく俺の右側に座ったのは月野さんだ。
当たり前のように俺のすぐ傍に座ってるけど、場所は他にも空いている。
さらに日七瀬さんも……。
「はふぅ。では私は、左に座ります」
「え?」
ちょっと、二人とも。なんで俺のすぐ横に座るの?
他にも座るところはあるでしょ。
「いや……、あのさ。他の場所に座らないと、やりにくくない?」
「ノートを見せ合う時もあるから、横にいた方がやりやすいでしょ。これがベストポジションと思わない?」
「そう……かな?」
「国際基準でそうよ」
国際基準に夏休みの課題を三人でする場合なんてないと思うけど……。
とはいえ、さっきから月野さんと日七瀬さんがお互いに敵意をむき出しにしているから、俺がこうして間に入るのは正解なのかもしれない。
すると普段は小動物系の美少女・日七瀬さんが、ふっ……とほくそ笑んだ。
この雰囲気は、戦闘モードに入った時の日七瀬さんだ。
「月野様はわかっていませんね」
「……どういうこと?」
「こうして一緒に作業をする時、利き腕側に座ると邪魔になります。率先して春彦様の右側に座るなんて、女子力の低さを感じざるをえませんね」
冷酷に淡々と話す日七瀬さんに、今度は月野さんは上品に笑って返す。
「ふふふ。はたしてそうかしら?」
「……どういう意味ですか?」
「今にわかるわ」
「むむむ……っ!」
あのさ……。ただ単に課題をするだけで、なんでそこまでピリピリするわけ……。
まぁ、いいや。
別にこの座り方でも課題をするのに困ることはないし。
しかし女子二人に挟まれて勉強するなんて、普通ならきっと幸せなんだろうな。
こうして俺達はしばらく課題をこなし続けた。
結果的にではあるが、お互いにわからない所やノートの見せあいをすることで、順調に課題は進んで行った。
確かにこの座り方だと、見せあう時に便利がいい。
だが事件は突然起きた。
ぽにゅん♪
「あんっ」
消しゴムに手を伸ばそうとした時、ひじが月野さんの胸に当たってしまった。
「あっ! ごめん、そんなつもりは……」
「ううん。わかってる。気にしないで」
わざとやったように思われてないだろうか。
こういうのって女子に嫌われるんだよな。気を付けないと……。
そう考えていたのだけど、しばらくしてまた同じようなことが起きる。
ぽにゅん♪
「あんっ」
「ごめん! 気を付けてはいたんだけど」
「いいの。大丈夫。それに春彦君なら、触られたって気にしないから」
おかしいな……。当たらないように気をつけていたつもりだったけど。
すると左側に座っていた日七瀬さんが声を上げた。
「あぁー! 月野様! 自分からアテに行ってましたよねー! それ、反則じゃないですかー!!」
えっ!? そうなの!?
真偽を確かめるために月野さんを見ると、彼女は挑発的に微笑んで肩をすくめてみせた。
「反則とか失礼よ。私はただ右側に座っているだけ」
「でも今、春彦様の腕の動きに合わせて、体の位置をずらしました!!」
「たまたまよ。偶然。そう……。ぐ・う・ぜ・ん♡」
絶対に偶然じゃないよね、その言い方……。
むしろわざとわかるように言って、日七瀬さんを挑発しているし……。
「月野様はズルいです! 注意を自分に向けさせて、そこから自分に好意を向けるように仕組むつもりですよね!! 昨日発売の月刊少女漫画ちゃるでやってましたよ!!」
「へぇ、あなたもあの漫画を見ていたなんて……」
「まったく。油断も隙もありません」
よくわからないけど、どうやら今の行為は少女漫画のネタだったようだ。
しかも同じ漫画を読んでいるなんて……。
実はこの二人って相性がいいんじゃないだろうか。
すると日七瀬さんは何を思ったのか、俺の腕に抱きついてきた。
「天音様のためにも、私がちゃんと春彦様を守らないと……」
「ちょっと! 善人ぶって、なに腕を組んでるの!?」
抗議の声を上げる月野さんに、日七瀬さんはツンとした態度で答える。
「護衛のための適切な行為です。素人は黙っていてください」
「でた! 無意味に上から目線で語る女! だったら私だって!」
さっきとは打って変わって、月野さんまで遠慮なく俺の腕に掴まってきた。
「月野様!! 春彦様が困ってますよ! 離れてください!!」
「私は日七瀬さんから守ろうとしているの!!」
「あなたの方が危険です!!」
「私のどこが危険なのよ!!」
「その胸でよく言えますね!」
二人とも胸が大きいから、さっきから幸せな感触がムニムニと両方から迫ってくる。
まるでワザと当てているようだ。
だけどさすがにこの状況はヤバい!
「ちょ、ちょっと! 二人とも落ち着いて!!」
そう制してみたけど、二人に俺の声は届いていない。
ヒートアップした二人は、俺を押し倒した。
さらにその状態で俺を取り合い始める。
「私が春彦君とこっそりイチャイチャするんだから、日七瀬さんはどいて!」
「どさくさに紛れて春彦様とイチャイチャするのは私です!」
「私よ!!」
「私です!!!」
寝転がったまま、二人に胸や太ももを俺に押し付けられて、もみくちゃにされる。
男としては嬉しいシチュかもしれないけど、俺には天音がいるし、なによりこの二人の殺気が怖い!
「二人とも……。ちょ……、大変な態勢になってるって……。気づいて……」
こうして、やっと状況が落ち着いたのは一時間後のことだった……。
■――あとがき――■
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