第41話 女子達の友情と……修羅場?


 期末テストが終了し、夏休みまであとわずか。

 今日はいつもの屋上で、みんなで昼食を食べていた。


 天音、月野さん、日七瀬さん、霧咲さんと四人の女子は、最近特に人気になっている朝ドラの話で盛り上がっている。


 月野さんが独自考察で鋭い指摘をした。


「あのドラマの本当のヒロインって、義母だと思わない?」

「そうかな? やっぱりメインは妹じゃない?」


 義母ヒロイン説を否定する天音。

 すると日七瀬さんも話に入ってくる。


「え……えっと。確かに義母が優遇されてますよね」

「わたくしは、新しいヒロインが来そうと思ってますわ」


 続けて新ヒロイン説を持ち出したのは霧咲さんだ。


 何かと謎が多い霧咲さんだけど、最近は天音たちと行動をすることが多かった。

 俺を自分のモノにしたいという目的は今も持っているみたいだけど、だからと言ってそこまで執着しているわけではないみたいだ。


 霧咲さんって、結局なにがしたいんだろう……。


 それはそうと……。


「……霧咲さん。学校ではお嬢様キャラで通すつもりなんだね」

「このキャラじゃないと会話になりませんもの」


 なるほどね。納得だ。

 中二病の霧咲さんはアニメキャラを演じることで、社会適応している……らしい。

 陰キャモードの霧咲さんを知っているからわかるけど、あそこまで無口だと学校生活はやりにくいよな。


 俺も陰キャだけど、無口ってわけじゃなくて、ただ単に自己主張していないだけだし……。


「それにしても、みんな、仲良くなったね」


 俺がそう話しかけると、天音は肩をすくめて答える。


「そうね。気づいたらみんな友達になってた感じかな」


 続けて月野さんが当たり前でしょといわんばかりの表情で言う。


「女同士ってこんなものじゃない? なんとなく自然に仲良くなるみたいな」

「はみゅ! そ……そうですね。こうして皆様と食事を楽しむことができて、わ……私は幸せです。ですぅ!」

「そうですわね。こうして友人たちと食事ができて、とても楽しいです」


 日七瀬さん・霧咲さんも、嬉しそうに友情を語る。


 少し前までこの四人はあまり接点がなかった。

 時には対立して、修羅場を繰り広げたこともある。

 それが今では天音を中心とした仲良しグループになっていた。


 男の俺にとっては、ここにいていいのかという場違い感を覚えることも多いが、それでも天音に友達ができることは素直に嬉しい。


 するとここで天音は箸を弁当箱の上に置いて、恥ずかしそうに下を向いた。


「私さ……。結構ドライなところがあるし、友達といっても距離を取られることが多いんだよね……。でも、こうして気兼ねなく話せる友達ができて、すごく嬉しい」

「天音……」


 天音がこんなことを言うのは本当にめずらしいことだった。


 確かに天音の取り巻きって、持ち上げるばかりで本音を語り合う友達とはちょっと違うんだよな。

 天音もそのことに気づいて、気を使っていたというわけか。


 すると霧咲さんが『ふふんっ!』とお嬢様っぽく笑って見せた。


「わたくし達はマブのダチですことよ! もっと本音で語り合いましょう!」

「そ、そうですよ! わ……、私達! ずっと天音様の友達です!」

「うん。私達、天音さんの友達よ」


 霧咲さんの言葉に、日七瀬さん・月野さんが同意する。

 その言葉を聞いて、天音は泣きそうな顔で「ありがとう」とつぶやいた。


 なんて美しい友情なんだ。

 まさに青春。これこそ女の友情だよな。


 その時、俺のスマホに着信が入った。

 発信者は……父さんだ……。

 なんだろう。嫌な予感がするんだけど……。


『もしもぉ~し! 父さんだよぉ~! 今、電話は大丈夫か?』


 声でかいな……。

 スピーカーにしていないのに、声が駄々もれだ。


「どうしたの?」

『いやぁー! もしかしたら気づいてないかもと思ってな。念のために電話してみたんだ』

「だから、なにを?」

『夏休みに入って俺達が一週間の新婚旅行に行ったら、春彦と天音ちゃん……二人っきりの生活だろ? 俺が言うのもなんだが、優しくしてやれよ!!!!!!』


 ――ッ!!!!!?????


 こともあろうに父さんは、皆に聞こえる声で俺と天音が二人っきりで生活をすることを暴露した。


 同時に月野さん・日七瀬さん・霧咲さんが表情から感情を消し、天音から離れていく。


「あ……、あれ? みんな?」


 苦笑いをする天音に、月野さんは氷のようなトーンでつぶやいた。


「ふぅ~ん。夏休みに春彦君とふたりっきりで……。しかも一週間……。へぇ~」

「まぁ、友達と言っても……恋は別腹ですからね……」

「女の友情なんて、こんなものですわ……」


 日七瀬さん・霧咲さんも声に感情がないので、めちゃくちゃ怖い!!


 っていうか!

 ついさっきまでの和やかなムードはどこに行ったんだよ!!


 うわぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 気まずい!! 気まずい、気まずい! 気まずいぃっぃぃぃぃぃ!!!!


「父さん!! なんであんたは、いつもいつも!!」

『ん? 俺、またやっちゃったか?』

「そのセリフ、ガチで言われたら、本当にムカつくんだけど!!!!」

『よくわからんが……、じゃあな!』

「あ、逃げやがった!!」


 俺と天音の二人っきりの生活は、どうなってしまうんだ……。



■――あとがき――■


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投稿は、毎朝の7時15分頃です。

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