仲間との兄救出作戦始動!

スイートピー

プロローグ

 兄が帰ってくるはずだったその日。兄は帰ってこなかった。

 遅れる時は私には必ず連絡をくれていたお兄ちゃんが。返事も返してくれなくて、何か異常事態でも起きてるんじゃ、と思った。


 兄がサークルで行った場所は近くの小山。親は地震もなくて土砂崩れに巻き込まれた可能性も低いから、純粋に楽しんでるんじゃ、と相手にしてくれなかった。


「夏休み、折角ですし皆で夏合宿とかしてみませんか?」


 後輩の琉斗りゅうとの一言で、皆が肯定的な意見を出してたのも、呑気だと思っていた。

 …だけど、そこでふと思いついた。親は基本行事など以外では遠出を許してくれないが、部活なら仕方ないはず。そう思って、軽い気持ちで提案した。


 きっと私の悪い勘違いで、合宿前には帰ってくる。そう思っていた。


 でも、兄は戻ってこなくて。でも、キャンプ地に荷物もないから、最初はただ行き違っちゃったんだろうな、と思ってそのまま楽しんでいた。

 部員お揃いのキーホルダーに、広いコテージ。森は蝉の音が煩かったが、夏らしさが出ていて。



「…れ、」 「っ…」 「あ…」 「え…?…な、んで…?」


 ―――それなのに、どうしてこうなったんだろう。

 神社で翔也しょうやがいなくなって、現れた変な人に襲われて、部長が怪我して…優奈ゆうなも滝壺に落ちて満身創痍。そんな時、お兄ちゃんに会えて。全部の事情を聴いた。

 アレはサークル仲間で、翔也しょうやと同じく祈ったら異変がおき、突然暴れだしたと。


 水晶で封印すればいいって聞いて、封印して終わりだと思ってたのに。

優奈ゆうなが引き付けてくれて、足止めをしてくれた兄を見て水晶を当てれば、兄は目の前で消えてしまった。視界には、驚いた顔の優奈ゆうながいて。


「な、なんで?どうなってるの? なんで、お兄ちゃんも…」 「…」

「うわあ!?」 「!」 「…あ、れ?…皆?」 「…翔也しょうや、先輩…!」


 困惑して皆立ち止まっていると、私の後ろから声が聞こえて。どうやら翔也しょうやが戻った様だった。よかった、と思ったけど、すぐにお兄ちゃんは?と考えた。


 どうして? アレは封印できてるのに…くっついてたから?


「…お兄さんが美琴しょうやをよろしくねって言ったの」

「えっ…」 「最初っからいくつもりだったんだ。偶像の中に」


 考えていたら、そういわれた。いつの間にか人私と優奈ゆうな以外いなくて。なんでお兄ちゃんは何も教えてくれなかったの?なんで…。

 そう考えて泣いている間、優奈ゆうなは落ち着くまで傍にいてくれた。


「何で…お兄ちゃんは逃げなかったのかな。…私達を、助けてくれたんだろう」

「…きっとのためだよ」


 それが、翔也しょうやなのか私なのか…私達全員なのかはわからなかった。でも、いつものより優しい声で言う彼女に安心してしまった。


 その後は、泣いてぐしゃぐしゃになった私の顔に対して何も言わないで手を引いてくれた。バーベキューに花火大会に、夜空を皆で見たり。

 どれも、普段なら楽しかった。けど、兄がいない事実を受け止めるのは時間がかかる。



「…美琴みこと。…何かするときは言って。…手助けするから」


 顔を向ける事は出来なかった。泣いてしまいそうなのがばれると思ったから。

仲間の温かさを再確認しながら、家に帰った。



美琴みこと、お兄ちゃんは…?」 「…いなかった、荷物もなかったし…」

「そんな…何か事件に巻き込まれたとかなのかしら…!」


 家に帰れば、家族は今更焦ったようで事実を離しても信じてもらえないだろうと思っていえば、両親は話し合って届けを出しに行った。


「…わたし、しか…」


 私と部員だけが、この事件を知ってる。…解決できる可能性がある。

 でも、私一人でアレと戦うなんて…知識も乏しいし…私が、助けに行かないと。




「…優奈ゆうな、お願い…お兄ちゃんを助けるのを、手伝ってほしいの」

「勿論。やっと覚悟決めたんだね」


 準備をするのに数日。お兄ちゃんが助けてくれたのに、危険な所に戻るのかと葛藤し優奈ゆうなに連絡するのに時間がかかった。


 優奈ゆうなに連絡してからは、方法を決めた。生き方は、部長しか車の免許は持ってなかったので電車になる。電車とバスを乗り継いで、神社に着いたら偶像を持って帰る。

 どうして持って帰るのかは、行き来がめんどくさいし祈れば乗り移られる可能性もあるから。そして、偶像に私は絶対に触らないほうがいいと言われた。どうしてかはわからないけど、優奈ゆうなは本当にまじめに言ってたのでとりあえず了承しておいた。



「じゃあ、美琴みことのお兄さん救出作戦、開始だね!」


 私の事を待ってくれてたんだろう。決行当日、彼女はとても嬉しそうだった。

 警戒心が高い優奈ゆうななりに思うことがあったのかもしれない。

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