第10話 エピローグ
「先日、複数人の児童が意識不明のまま病院へと搬送される事件が起こりました。彼らに共通しているのは、いつものように眠ったまま目を覚まさなくなったという点と枕元に灰の入った布を入れていた点です。
医師たちもこのような症状は初めてと申しており、現在も原因の究明が急がれています。なお、意識不明の児童は全員、15歳未満の少年、少女です。続いて、次のニュースです。」
私はカーテンを閉め切った暗い部屋でテレビを通して児童集団昏睡事件のニュースを眺めている。最近ではこの事件が非常に多くなってきている。このニュースを見るたびに私は2年前のことを思い出す。
息子の、翔との最期の会話は本当に些細なものだった。最近の学校での人気のテレビ番組は何か、などの会話だっただろうか。あの日、私たち家族の歯車は一瞬にしてバラバラにかみ合わなくなってしまった。
あの日、いつまで経っても起きてこない翔のことを心配し妻は様子を見に行くと息子の部屋から悲鳴が上がる。
私が駆けつけてみると妻がパニックを起こしており、息子のほうに目を向けると様子がおかしく、容体を確認すると意識が無いようだった。
私はすぐに救急車を呼び、病院に搬送するも結果としては意味がないことだった。医者からの診断は無慈悲なもので息子は昏睡状態で二度と目を覚ますことはないと言われた。
当初、私と妻は献身的に息子の世話を行っていた。医者に見放されたとしても私たちの息子だ。どこの世界に息子のことを見捨てる親がいるだろうか。
私たちは互いに交代しながら順番に息子の世話を行っていた。しかし、こんな生活も長くは続かなかった。
日々、睡眠時間を削り世話を行うも、いつまで経っても回復しない症状。妻はこの生活に肉体的、精神的に参ってしまったのだろう。
ある日、私が病院から我が家に帰宅すると妻が首をつっていた。足元には遺書と書かれた紙が置いてあり、内容は今の報われない生活に疲れてしまったと書かれていた。
一足先に息子の元へと向かうことを許してください。あなたに相談しないでこんなことをしてしまい申し訳ありません。迷惑をかけてごめんなさいと。
その日、私は大人になって初めて涙を流した。いつまで経っても涙は枯れることなく、次から次へと溢れでてくる。息子が昏睡したあの日に私だけは、しっかりしないといけないと決意したはずだった。
あの日からは常に気を緩めることなく、毎日を過ごしていた。息子は意識を失っているだけで亡くなっているわけではない。そのため、私の中には少なくても希望が存在していた。
しかし、最愛の妻は既に亡くなっているのだ。死者となってしまった妻には希望などはない。こんなことがあり、私も限界だったのだろう。希望がないと分かったとたんに私の心の中で何かが壊れてしまったような気がした。それからというもの私の中にはぽっかりと大きな穴が開いているような気がしてならない。
あれからというもの、私は息子が意識不明になった原因について調べ始めた。調べたところ、息子はカクレユメという遊びをやっていたということが分かったのだ。
私も、これと同じことを行えば息子に会えるかもしれないという希望を抱き調べた手順でカクレユメを行ったが夢の世界とやらが私の目の前に現れることはなかった。
どうやら、15歳未満の人間にしか夢の世界に足を踏みいれる権利がないようだ。私は今でも息子が目を覚ますことを信じてカクレユメに関する情報を集め続けている。
ここ2年でかなりの子供たちがカクレユメを行い、意識が戻っていないようだ。最近では子供の親たちもカクレユメをただの遊びと考えず、子供に絶対に行わないように教えているらしい。
しかしながら、彼らは子供だ。たとえ親が止めようとカクレユメを行ってしまう子たちが後を絶たない。一説ではカクレユメで意識が戻らない子供たちは夢の世界で何者かの遊び相手をさせられているらしい。
私は一刻も早く、カクレユメの真相を解き明かし息子の目を覚ましてやりたいと考えている。その時は息子と共に妻の墓参りに行くのもいいだろう。必ず、父さんが助けてやるからな翔。
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これでこのお話はおしまいです。ここまで読んでいただきありがとうございます。このお話は短編向けに作製したお話ですが、長編でも読みたいというお声が多ければそちらのほうも考えたいと思います。
もし、長編も読んでみたい、面白かったと思われる方は是非ご感想をお願いいたします。フォロー、星のほうもぜひお願いいたします。
カクレユメ~かくれんぼは夢の中で~ 創造執筆者 @souzousixtupitusya
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