第6話 邂逅

「ねぇ、今、誰かの声が聞こえなかった?」


僕のささやきに他の三人は一斉に僕に目を向け、あたりの空気は一斉に静まる。


「お、おい、気味悪いこと言うんじゃないぞ。ここはカクレユメをやったやつ以外には誰もいない世界なんだよ。」


『どうして?』


今度ははっきりと聞こえた。はっきりと、どうしてという言葉が聞こえた。それはほかの三人も同様なのだろう。三人の凍り付いた表情を見れは否が応でも理解することができた。


「おい、いまのなんだよ!」


「あんた、つまらないイタズラはやめなさいよ。さすがに悪趣味よ。」


「ヒッ!」


由佳は完全に恐怖で顔が凍り付き、龍矢はあたりを見回し声の主を捜している。真矢に至っては、今の声は龍矢が仕込んだイタズラではないかと考えているようだ。


『どうして、かくれんぼで遊んでくれないの?』


僕たちは声がする方向に顔を向けると田舎道の少し向こうでおかっぱ頭の着物姿の女の子がゆっくりとこちらに歩いてきている。初めはただの子供かと思っていたが徐々に近づいてくることでその姿をはっきりと見ることができた。


ただの子供と思っていた女の子はあり得ないくらい肌は白く、眼は少し飛び出ており、ここから見える部分に白目は見られず、瞳孔は完全に開ききっていた。


ようやく僕たちは理解した。彼女は人間などではない。何か異形のものだ。彼女が一歩、また一歩と地を踏みしめるごとに僕たちの元へと近づいてくる。


僕たちは恐怖から動けないまま固まっていると気づけは彼女との距離は10メートルを切っていた。ここにきて、僕はようやく声を発することができた。


「みんな!逃げるぞ、あいつはヤバイ、本当にヤバイよ!」


僕の声に龍矢と真矢は我に返り彼女と反対の方向に走り出す。僕もその後ろについて走り出すが由佳がいないことに気づく。


後ろを振りむき確認すると恐怖で腰を抜かしている由佳に彼女が手を伸ばそうとしている所だった。


「ヒッ、い、いや。」


「由佳!」


僕は彼女に対する恐怖も忘れ、由佳を無理やり立たせる。そのまま、手を引っ張り由佳と共に彼女から逃げるために走り出す。


少し遠くに見える龍矢と真矢の後ろを追いかけることだけを考え僕は後ろを振り返らずにひたすら由佳の手を握り走り続ける。


どれだけ走っていたか、目の前の二人は息を枯らし立ち止まっている。二人に合流すると僕は後ろを振り向き彼女が追ってきていないのを確認するとようやく少しだけ緊張の糸を切らし、立ち止まる。


気づけばかなりの距離を夢中で走ったのだろう。今までに感じたことがないくらい胸が苦しく息をするのがつらい。呼吸を整えるのにはかなりの時間を要する僕たちであった。

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