our last lovers(改定前)

椿原

プロローグ

 《ルール》

1, 如何なる場合に置いても無関係なモノを巻き込まないこと

2, 必ず自身の“神”を信仰すること。裏切りは認めない

3, 自身の陣営の一人でも欠けてしまえば、もう進む事はできない

4, 政府ラボの職員は一人も欠けることができない。仮に 3, を守れても進む事はできない

5, 足掻くな。お前は放棄する事などできない



**


 あー。これで大丈夫そうですかね。ん、失礼。どうやら、しっかり見えているようで。安心しました。

 コホン。

 現世の皆様、こんにちは……こんばんは。挨拶はしっかりさせていただきますね。一応規則ですので。

 お初にお目にかかります。

 Emily •Murphyエミリー・マーフィーと申します。

 ……え? 浮いているように見える? いやまぁ浮いていますので。

はい? 貴方、面白い事を聞くんですね。野暮ってもんじゃないでしょうか?


 いや、だって……


    悪魔ですし。


……そう怖がられても何も出ませんよ。別に貴方のことなんて心底どうでもいいので。


 というか、あの阿呆天使から何も聞かされてないんですね。失礼、口が悪かったようです、お気になさらず。

 てっきりあの人が先に貴方に有る事無い事吹き込んでいたかと。敵とはいえあまり悪く言ってしまってはいけませんね。

 じゃああの人とこれから会う貴方に、一つ忠告しておきますか。

 あの人の言うことあまり間に受けない方が良いですよ。基本頭が痛くなるような発言しかしないので。


 そうだ、知っていますか? 貴方は知らないと思いますので“親切に”私が教えて差し上げますよ。

 あぁ! 遠慮なさらないで!

 遠慮じゃない? 強引に話を変えるな、ですって? 悪魔にそんな事求めないでくださいよ。

 とにかく、しっかり耳の奥に響かせてくださいね……?



 『本日、貴方の大好きで大嫌いな世界が--終わるそうですよ』




* 目の前の悪魔は言いたいことだけ言うと、すぅ、と実態を無くした。

先程までなかった道が、奥へと続く道が出来ている。退路は塞がれた。

貴方は進むしかないようだ。 *




***


 なんだ! 人間か! しけたツラ? ってやつをしてるな!

 オルティスに何か唆されたのか?! それは残念だ!

 ……? “ おるてぃす? ”って顔をしたな、表情が変わるってことはお前、やっぱり傍観者、あるいは……うん、何だったかな、忘れた! 

 よくあることだよな!

 オルティスは悪魔の事だ。私と対の存在! つまり私は天使! 全知の天使なのだ!


 Eveイヴって呼んでくれればいいぞ!


 まぁ、あいつから聞いているとは思うが、世界は滅ぶ。オルティスの思い通りにな。そんなことあってたまるか、と思うだろう?

 そんなこと思わないって? 私は思うからお前も思うのだ! ……多分。

 あいつは愛する人を救う為なら何もかもを犠牲にする。世界だって捧げてしまう。あいつは間違っていることに気づいてない。


 えぇい! 説明は面倒だ! つまり!


 『我々は戦争するのだ! 人類を救済するために!』



* 次に会ったのは天使と自称する少女だった。先程の悪魔といい、この天使といい、思考はかなり偏っている。そう貴方は思う。先程同様道が、さらなる深淵へと導く道が出来ている。

貴方の覚悟はできたようだ。自らの意思で進んでゆくのだろう。 *



 馬鹿みたいに私にも話す権利があるだなんて言って、面倒なことはさせるのね。


 ……! ここに人が来るなんて、思ってもいなかった。すみません、何も用意してなくって。お茶もないですが、まぁ、そこの椅子にでも座ってください。



* きっと貴方は戸惑いの顔をしていたのだろう。先程の二人を見た後、次はどんな恐ろしい“何か”が待ち受けているのか、と思ったはずだ。

でも、どこか期待していた。その期待は打ち砕かれ、目の前の彼女はただのヒトのようだ。 *



 ……どうも初めまして、長瀬百合です。やっぱり、急に色々言われたみたいですね。すみませんが、そのまま勝手に“私の独り言”を聞いていてください。


 あの二人の話を聞いて、貴方は納得しますか。しませんよね。

私はしませんでした。でも、巻き込まれてしまったんです。友人も、兄も。

 初めて見た友人……いや、何度も見た彼女の“死”は私と目を合わせてこう言ったんです。

 「ごめんね」

って。

 初めは自分を置いて逝ってしまったからかと思ってました。実際は違った。

 あれから何度も謝る彼女を見たんです。謝罪から事実を知ることは容易いことではなかったんですけれど……ね。


 ああ、そうだ。一つお願いがあるんです。天使や悪魔の話、しっかり聞いた上でのお願いです。あんな奴らの事なんて無視して、私を信じてくれませんか。

 ……同じ人間でしょう? 

 私に強いる権利はないからお好きにしていただいて結構です。えぇ、えぇ。それはもう、貴方の思うままに。


 チッ、変にあの人に似てきた……

我ながら腹が立って仕方がない。


 あ、ごめんなさい。こっちの話です。



 世は理不尽。それが嫌と言うほど分かったんです、だから私は。




 『全員生還させて腐った根性を叩き直すわ。天使だって悪魔だって、私の世界には不要なのだから』



* 彼女の意思は強いようだ。

 貴方はその後……? *

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