第34話 夕暮れ、階段、時々少女

 掃除当番とは残酷なもので、テスト前であろうとなかろうと長時間学生を拘束する。

「なぁ鷺ノ宮なんで俺たち二人で掃除当番なんだ?」

「お前がクラスの子にカッコつけて『俺がやるから帰っていいよ』とか言い出したからだろ」


「そう怒るな親友、あの子たち学年子に達に俺らのいい評判を付けてもらえるかもしれないじゃないか」

「評判なんて要らない、早く帰って勉強させてくれ」

「勉強好きだな~、俺はやっぱ勉強より女だろ!女!」


「あのな勉強が好きな訳ないだろ、仕方なくやってるんだ」

「そうなのか?」

 何か奇妙なものを見る視線でこちらに聞いてくる。

「当たり前だろ」

「なんでそんな勉強ばっかりするんだ?」

「例えばお前、あれだ、夏木さんか星崎さんどっちでもいいけど、勉強できない人は嫌いって言われたらどうする?」

「死に物狂いで勉強するにきまってんだろ、俺は世界で3番目に勉強が嫌いだが、2番は女の子に嫌われることだ」

 一番は?とは面倒くさいから聞かない、こいつのペースには持っていかせるとろくなことがない。


「まあ俺が言いたいのはそんな感じの事だ、仕方がないから勉強を取るって感じ」

「お前も大変なんだな」

「そういえばお前の大好きな大好きな星崎さんが『バカは大嫌い』ってこの前言ってたぞ」

「本当か?今日から勉強するぜ、相棒の家な」

「うちはダメだ」

 僕と凉の関係をギリギリ理解しているかしていないか分からないこいつに、家が隣だったり凉が家にいることがバレたら何を言われるか分からない。

 

「じゃあファミレスでも行くか?」

「いや、行ってもいいんだけど凉にはナイショなら」

「そういうの良くないと思うぜ鷺ノ宮、ハブくみたいなのはあんまり好きじゃないぜ」

「そういう事じゃなくてな、なんていうか凉と一緒だと勉強にならないんだよ」

「なんか釈然としない言い方だな」

「色々あるんだよ、それより俺なんかと勉強するより星崎さんと帰らなくていいのか?」

「今日も一緒に帰ってくれっかな星崎さん」

「幼馴染なら一緒に帰れるだろ」

「お前が言うなら間違えないな」

 菊池はそういうと超特急で掃除を終え、笑顔で星崎さんのもとへと走り去っていった。


 自分の掃除用具も片付け終え、こちらも幼馴染が待っている教室へと向かう。

 階段を上がっていると、夕暮れ時のやけにオレンジ色の階段に一人可憐なる少女が、ただただ何もせずにそこに立っていた。

「天川先輩こんにちは」

「え、ああ秀じゃない」

「先輩なにかあったんですか?」

 なぜかそんな事を聞いてしまう。

 いつも彼女は儚げで美しいが、今はどこか一風変わった例えるなら線香花火のような寂しさを感じたんだ。

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