2章

2-A'『ためいきは白く染まりて遠い青届きはしない僅かな白を』

「歌奈ちゃん」

「あっっちおはよー」


 冬も本格化して、はコートをんでいた。ファミレスに入ると、練習の待ち合わせの一番乗りだった歌奈が、すでに片手にシェイクを持って飲んでいた。


「寒くないの?」

「中はあったかいから逆に」


 以前、歌奈に根負けしてくずした口調にしたに、歌奈もうれしそうだ。コートをいで丸めながらりんで店員を呼び、『このいちごシェイクを一つ』とたのんだ。


「にしてもさ、っちのベース、ほんと『さすが経験者!』ってさだよね」

「え、あはは……」


 照れ笑いをかべるに歌奈がにこにこしていると、あんはるもやってきた。二人がすわれるように席をめた。


「おつかれ!」

あんはる、おっつー」

「歌奈、今日はどうする?」

「そだねえ、『星の忘れ物』やろっか。はるもいい?」


 手元のけいたいいじっていたはるも顔を起こしてにかっと笑う。


「いいよー!」

「おっけ、それでいこう。じゃあ、たのんだもの飲んだら会計するね」

「はーい」


 休みの日の夕暮れ。ファミレスが少し混み始めたころいで、4人は練習スタジオへと向かった。


 練習スタジオの機材のセッティングを終えて、少しぜまな空間で一息つく。


「歌奈、今日はテンポおそくする?」

「いつも通りで一度通そう」


 とたたタたたとたたタたた。

 はるていねいに3連符を刻む、4を4つ数えて、キーボードが入る。きらきらとしたエレキピアノ。が短歌を思いつくよりも早く、もベースで入る。歌いだしは、ボーカルの歌奈。


――遠い空 はなれても 君といた あの時間を


 聞けば、のいとこがバンドをだつした後に、歌奈が自分だけで書いた歌詞らしい。それまでは手伝ってもらいながらだったので、この曲はまだ不慣れなのを感じる、とあんも言っていた。それは歌奈自身も分かっていたが、あんはこうも言っていた。


『――でも、歌奈らしい歌なんだよね。ああ見えて元気いっぱいというより、キラキラした歌詞が好きだから』

『そうなんですか……』

『歌奈が、ちゃんに入ってほしいと強く思ったのも、この歌詞を見ると分かるでしょ?』


 さびしそうな色がかぶひとみかれるけれど、見続けてよいのだろうか。ベースをきながら、は目を閉じて願う。

 その色が、夕焼けのようにれいな色になりますようにと。

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