2
「お兄さん、どうして泣いてるの? 何か悲しいことでもあった?」
少年の言葉を僕は、耳で、聞いていた。
少年は、他には何も言ってこない。
何も聴こえてこない。
これほどまでに、嬉しいことがあるだろうか……
少年は、そんな僕を見て首を傾げている。
「あぁ、ごめんよ。ちょっと……。堪え切れなくて……」
そう言って、僕は涙を拭き取る。
そしてようやく、冷静になって考えてみる。
どうして、こんな事が起きているのだろう?
まず、この少年は、どうしてこんな真夜中に、こんな場所に、一人でいるのだろう?
「あの……。君は誰だい?」
「僕? 僕の名前は
「僕かい? 僕の名前は……。いや、そんなことより、君はどうしてこんなところに一人でいる? もう真夜中だし、家に帰ってないと、お父さんやお母さんが心配するだろう?」
僕は、嫌に年上ぶってそう言った。
「いいんだ」
少年は首を横に振る。
「いいんだって、良くないよ。家まで送るから、一緒に行こう」
「いいんだ。そんなことより……。お兄さん、僕のことを必要としてるでしょ?」
少年の言葉に、僕は固まる。
正直なところ、こんなに穏やかな気持ちになれたのは久し振りだ。
きっと、普通の会話ができているからだろう。
それは明らかだ。
だけど、こんな小さな子どもに、いったい何ができるというのか……。
それに、どうして、この少年のこえは、聴こえてこないのだろう?
「お兄さん。僕は、お兄さんがどうしてここにいて、どうして自殺しようとしてるのか、その理由を知りたいんだ」
少年の言葉に、僕は戸惑う。
まさか、この少年は、僕と同じように……?
いや、同じなら、僕の考えていることは全て……
でもどうして、少年の声は……
頭の中が混乱していく。
右手に握りしめている赤い頭巾を、もう一度被ってみようか。
そうしたら……?
「それは、もう二度と被らない方がいいと思うよ。お兄さんも、わかってるんでしょ?」
少年の言葉に、僕の体が震え始める。
この頭巾のせいで僕は……、僕の人生は、めちゃくちゃに……
「お兄さん、教えて? お兄さんの身に何が起こったのか、僕に聞かせて?」
少年は、優しい声でそう言った。
体の震えが止まらない。
また、涙が流れてきそうだ。
この目の前の少年に、いったい何ができるのだろうか?
僕の身に起こった事……、恐ろしい、出来事……
それを今ここで話したからといって、何が変わるわけでもない。
でも、僕は……
「あれは……、二年前の夏だった」
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