あんたまでわかんないの?

 拓馬さんはわたしに見向きもしなかった。

アイツはブス専とみた....そう、美女には一切興味無いイケメンブス専の遊び人。

そういや、クリスマスに居たあの巻髪クネクネ女.......同類のニオイがしたな......わたしと。


しょうもない.....わたしが一番しょうもない

顔でふられた、捨てられたわけじゃないんだ

わたしが捨てられたんだ

よりショックだ......すぐ顔のせいにした自分が


そしてわたしは唯一の心の拠り所、故郷を失ったことに気づいた。


わたしには親がいない。この不釣り合いな名だけを残し消えた親。

わたしには捨てられることが一番の屈辱なのかもしれない。


施設で育った。特に愛情に飢えて育ったわけじゃない......家庭とか親とか知らないから私には施設が家庭。とってもいい人達に囲まれて育った。


 なのに施設はある日火事で燃えたんだ..... .わたしが16歳のとき。

必死で下の子たちを探し回った。無我夢中で誰も失いたくないって。でも息苦しくてつぎつぎ炎が激しくなってこのままじゃ自分ももう駄目だというとき

―――誰かがわたしを担いで燃え盛る炎の中ギリギリで外にでた。



 「ハァーハァ 美姫!おいっ美姫!目開けろ」

死に物狂いで私を担いで走ったのは、同い年の純一じゅんいちだった。

わたしたちの施設『太陽の家』は―――燃え尽き失くなった。

兄弟達も亡くなった.....。


まだ夜が明けるか明けないかの早朝だった。みんな眠ってたんだ。

ずっと気になった.....夢の中で眠ってる間に天国に行けたのか

苦しまなかったか.....あの子達が―――


その純一が立ち上げた『太陽のあたる場所』っていう成人した施設出身者が集う会があった。

社会に出てから、帰る場所はここだった、実家に帰るみたいに月に一度わたしも参加してたのに、この姿じゃ...... 。




+++


それでもわたしは『太陽のあたる場所』に参加した!


「あ 何かご用ですか?」


ジュン!ジュンまでわたしが分からないのか......。

はあ.......美姫だよ?今日終わったら一緒に焼き鳥屋行ってお酒ひっかける予定のわたしだよーっ......。


「あ あの参加は出来ますか?」

「もちろん。お名前 住所 職業をこちらに。あっ身分証ありますか?」

み 身分証?あれだしたらビックリするだろ。


仕方ない 心は痛むが......

『小谷 みき 会社員 東京都練馬区〇〇〇〇』


「あの、身分証が今無くて」


「いいですよ。またある時で。一応なだけなんで、ハハハ。

あれ?小谷こたにさん、みきさんっていうんですね。

一字違いの大谷 美姫がいるんですよ。もうすぐ来るはず。とりあえず入って下さい。」


ジュンは消防士になった。

きっとあの事件がキッカケ。好青年で優しくておばちゃんウケ抜群、ちょっとわたしにはエラそうだけど、なかなかハンサム。キリッとした目力つよしの二重と真っ白な揃った歯で笑顔が輝くきれいな口元。まっわたしは施設から幼馴染ならではの兄妹みたいなもん。


見慣れた場所にソワソワしている私のスマホがなった。

「ああぁすいませんっ」

ん?

『美姫 始まるぞっ どこにいる?どっかで酔っ払ってねーだろな』

うわっアッチでスマホ片手に、清々しい顔してこの文章打ってやがったな!ジュン


『すまんっ今日はイケナイっぽい。別にイケナイ事はしてないよ〜』


『ラジャー。超絶美人のみきって人がきてる!美姫と並べたかったわダブルみき』

う゛.....これは放置だな


「皆さん こんにちは 白石しらいし 純一です。今日初めての方が居るんですよ。小谷 みきさんです。そうだ三浦みうらさん、そこの小谷さんにこの会の説明お願いします」


あ、一字違いの名前にみんな反応を、もうちょっと捻ればよかったなっ。

谷きみこ とかに。




ここに集まり、自分が得たものを貢献したり、寄付したり。物だったり経験だったり。施設の在り方を考えたり。

また自分達の交流の場でもあった。大半の人はきっとここで他愛もない会話がしたくて来てる。


会が終わった。

『食事だけでも来ないのか?腹へってないのかー?』

『今日はムリー。ありがと また今度!』

『ラジャー。』 


はあ焼き鳥屋ジュンと行きたかったな〜仕方ない。腹減ったけど。

鳥刺しも食いたかったわ。


「みきさん!」

「みきさん 焼き鳥屋行きますか?」

おっ!!行く行く

「はい 行きます いいんですか?」

「何人か行くんで一緒に行きましょう」

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