第58話 美央のご褒美

「みやび君!ご褒美をください!」


美央は待ちきれないといった様子で俺に迫ってくる。


「ん..そうだな」


俺たちは近くのソファに腰掛ける。


「では..えへへ」


美央は撫でる前から、嬉しそうに微笑んでこちらに頭を向けてくる。


「みお、よく頑張ったな」


「ん..ありがと..ござぃまぁす..」


美央は目を細めながら、とても気持ちよさそうな表情をしている。


(こうやって見ると本当に綺麗な顔だ)


美央はシミひとつなく白く柔らかそうな肌、小さな頃から手入れを欠かさなかったのだろう。

髪もサラサラで美央が少し俺の方に寄ると、何かは分からないがとてもいい匂いがする。


「み、みやび君..あまり私の顔を見つめないでください..恥ずかしいです...」


美央は目を少し逸らしながら言う。


「あ、ああ!悪いな..」


「いえ..あの..もっと見てもいいですけど...」


すると今度は、俺を見上げる形で俺の目をじっと見つめてくる。

その上目遣いの仕草に不覚にも可愛いと思ってしまった。


「あの..みやび君?」


しまった、思わず美央に見入ってしまった。

そのことに気づいた美央は嬉しそうにしながら、まだ撫でてと言うように身体を寄せてくる。


「..いつまでやるんだ?」


「もうちょっとだけ..お願いします..」


俺が手を離すと、目を潤ませながら寂しそうに見てくる。


「...わかったよ、あとちょっとな」


俺は再び美央の頭に手を乗せて、軽く撫でてやる。


「むぅ..ん...」


頭を撫でているだけなのに、美央は本当に幸せそうな顔で、俺の手を堪能しているようだった。


「すー、すー」


しばらくすると、美央は眠ってしまった。


「寝たのか、みお..ってうわ⁉︎」


俺の肩にもたれて眠っている美央の服..というかセーターは美央の呼吸に合わせ、少しずつずれてしまっている。

すると、それに合わせて少しずつ美央の豊満な胸が見えてきてしまう。


(ま、まずい⁉︎)


俺は咄嗟に美央とは反対方向を見る。

おそらく今の美央の姿はほとんど隠せていない状況だろう。


(こんな所..はるかに見られたら..)


「たっだいまー!」


「...」


(最悪だ..)


静かな部屋に遥の元気の良い声が響き渡った。

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