死の代表 対 生の代表

 扉の向こうには、巨大なガイコツがいました。エントランスを埋め尽くすほどの、大きなスケルトンですね。スケルトンと言うには、あまりにも大きすぎます。モンスターや巨人の死体というわけでは、なさそうですが。


「ありゃあ、【ガシャドクロ】だ! アンデッドの中でも大物だぜ! 注意しなクリス!」


 ソナエさんが、前に出てきました。


「大丈夫です。ここはわたしが。王女とソナエさんは万が一のために、人々を安全な場所へ」


「お一人で、相手になさるおつもりですか?」


「ええ。十分すぎます」


 片腕でもいいかもしれません。


「そんな減らず口をたたけなくしてあげるわ!」


 片手の上に乗りながら、ネクロマンサーさんがスケルトンに指示を送ります。


「裏拳で薙ぎ払って!」


「ガアー」


 エントランスの踊り場に少女を投げ、ガイコツが裏拳を放ってきました。


「ホワタ!」


 ドロップキックで、弾き返します。


「なんですって!? アイアンゴーレムさえも粉砕するガシャドクロの拳を、生身で受け止めるなんて!」


 ネクロマンサーさんが、驚愕しました。


「アイアンゴーレムなんかと同格と、思わないでください」


「くっ! 冷たい息よ! 凍らせなさい!」


 まだ、ネクロマンサーさんはあきらめません。


 ガシャドクロが、大きく口を開けました。死を吹雪に変えたような、冷たいブレスを吐き出します。


「ホオオオオワタァ!」


 わたしは腕を、風車のように回します。わたしにだって、炎属性の魔法くらい使えます。手のひらに炎魔法を展開し、腕を高速で振り回すことでブレスを拡散します。


「矢でも鉄砲でも、ブリザードでも持ってらっしゃいな」


「そんな! ガシャドクロの攻撃が効かないなんて!?」


 こっちは、太古の邪神とも戦ったことがあるのです。ちょっと大きめのスケルトンくらい、造作もありません。極秘事項なので、いいませんけどね。


「あきらめてくださいな。こちらは人々を驚かせるのを止めたいだけです。おとなしく退去なさってくれたら、なにもしません」


「イヤよ! ここはあたしの家なの! 壊させないわ!」


 なるほど。


「ではあなたが、例の時計で稼いでいた貴族様の」


「そうよ! あたしはジターニャ・ヤムキン。ヤムキン家の血を引く者よ。ネクロマンサーの力も、ヤムキン家のものだったんだから!」


「一家離散したのでは?」


「ヤムキン家は破産したけど、血筋は続いていたのよ! あとは家を買い戻すだけだったのに!」


 厄介なことになりましたね。


 取り壊し予定の家に、所有権を主張する人が現れました。


 コレばかりは、力業で解決というわけにはいきません。

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