すき焼きは罪の味

 白菜やネギをいただきながら、お肉が煮えるのを待ちます。


「よし、煮えた」


 お肉が、しょうゆの味を染み込ませて完成しました。あっという間でしたね。もっと時間がかかると思っていましたが。


「最初はガッツリ行きたいと思ったから、モモとかいいんじゃないか? ってね」


 お言葉に甘えて、赤身肉をいただきましょう。


罪深うまい!」


 ライスと一緒に食べると、これまた最高ですね! 口を動かすたびにうま味が吹き出てくるので、ライスとの相性がもう最高で。言葉になりません。語る前に、語彙が蕩けちゃいます。


 ああ、飲み込んだときのノドの感触までおいしいとは。


「続いて、肩ロースだ。霜が降りまくってるだろ」


 こちらは知っていますね。焼肉屋さんでも出てきました。卵で食べると、どうなるのでしょう?


「ん!? 罪深うまい!」


 脂がたぎっています。これもライスがまた進む進む。いやあ、なんとも食べごたえのあるお肉です。


「わたくしも、箸が進んで仕方がありませんわ」


 ウル王女も、すっかりお肉とライスのコンボに釘付けになっていました。


 ライスの上で脂が溶けて、またなんとも言えない味わいに。これは、おかわりするしかありません。こうなったら、肉巻き卵かけご飯ですよ。


「あとは、こいつだな。ホントは料理屋とかレストランに回すってんで、数は少ないんんだが。くれるっていうから、特別に分けてもらった」


 自分でさばくことを条件として、いただいたそうですね。


「さて、お味は……」


 これは、罪深うまい……なんてもんじゃありません。もっと底しれぬ罪を感じます。


「なんですか、これ。このお肉、やわらかすぎません?」


 焼肉で出る部位とは全く違う、薄いお肉です。なのに、脂が乗っていて濃厚でした。


「それはな、ミスジってんだ。希少部位だよ」


 腕の部分、肩甲骨の内側のお肉だそうで。


 焼肉で言うと、特上カルビに該当する部位だといいます。


「牛一頭辺りから取れる量は、二キロだけだってよ」


 そんな貴重なお肉を、いただけるとは。


「これが酒に合って厄払ヤバいってんだ。よし、じゃんじゃん行こう」


 再度、赤身肉が投下されました。


 先程のお肉と比べると、身が引き締まっていて噛みごたえ抜群です。


「もっと、ガーッとかきこみたいですね」

「卵のおかわりはあるから、他人丼もできるぜ」

「やりましょう」


 お肉の他に、玉ねぎ、長ネギ、シイタケもトッピングして完成しました。即席ミニ他人丼が。


「こんなの、罪深うますぎますっ!」


 もう、たまりません。お店に行かなくても、こうして他人丼が味わえるなんて。


 ウル王女はと言うと、もう王女の威厳がありません。メシの顔になっています。


「はふう」

「あれだけあった鍋が、もうなくなるとは」


 すき焼き用のお肉も、なくなりました。他は、保存用にとってあるお肉しかないそうです。


「いやあ、やっぱクリスが来るとこうなるよな。あたしも大概食うけど、酒メインだからさ。ここまで食ってもらえると気持ちいい」

「ありがとうございます。ごちそ――」

「シメにうどんがあるんだが?」

「いただきます」


 また生卵をいただいて、おうどんをすすります。


 ああもう罪深うまい。

 すべてのうまみを凝縮した、しょうゆ味のおうどんですよ。ノドごしも、食感も、夢心地です。


「キレイに全部、なくなったな」

「今度こそ、ごちそうさまでした」


 いやあ、食べました。


「満足ですわ、ありがとうございます。ソナエさん」


 ウル王女と一緒に、後片付けを手伝います。


「また来なよ。あたしはもうちょっと呑んでるからさ」


 ソナエさんは、もう少し飲むそうでした。


 神社から二時間かけて、教会へ帰ってきます。


 まだお夕飯までは時間がありますが、みんな待っているでしょうし帰りましょう。


 なにやら、中が騒がしいですね。


「どうされました?」


 みんな、白菜やらネギを刻んでいます。

 大根をおろしている人たちも。


「夕飯ついでに、打ち上げをやるのよ!」


 シスター・エマが、餅つきをしていました。


「今日の夕飯は、東洋鍋っぽく水炊きよ! ウル王女もどう?」


 おおう。これまたお鍋ですか。


 いいですねぇ。

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