みんなでタコパ

 その後、野盗たちは全員捕まりました。首謀者の商人も、ミュラーさんたちが捕らえたそうです。


 そんなことより、このタコですよ。


「どうしましょう?」

「どうって、タコパだろ?」

「ソナエさん!」


 現れたのは、ソナエさんでした。ギャルみこしのようなハッピを着て、屋台を引いています。同じ格好のエマと一緒に。


「呼んでいましたっけ?」

「ワタシが呼んだのさ。タコを料理してもらう担当で。よろしく頼む」

「うっす。久しぶりっ。また飲もう」

「そうしようかね。では、駆けつけ三杯。ああ、これはいい酒だ!」


 魔王と巫女が、東洋のお酒を酌み交わしていますよ。どういった光景なのでしょう。我が神が見たら、卒倒するでしょう。


「ところで、タコパってなんですか?」

「たこ焼きパーティのことだよ。各々が具材を持ちよって、たこ焼きにして食うんだ」


 それで、たこ焼き器の屋台を用意したのですね? 


「タコ以外が入っていても、食べるんですね?」

「中身なんて、なんでもいいんだよ」


 えらいアバウトなパーティです。


「よっし。んじゃ、たこ焼きパーティと行こうぜ」

「手伝うわ!」


 シスター・エマが、屋台のプレートに火を付けました。


「エマ、助かるよ。クリスは、園児たちを呼んでくれ」


 ではと、わたしが園児たちを呼びます。


「何をしてもらいましょう?」

「小麦粉を混ぜてくれないか?」

「はい」


 水で溶いた小麦粉を、大きなお鍋でグルグルとかき混ぜました。園児たちとやると、楽しいですね。


 フレンは別の鍋で、ウル王女と一緒に小麦粉を混ぜています。


 ソナエさんはタコをさばいていました。足は、ドローレスとエンシェントが小分けにしています。


「ではみなさん、生地を焼いていきますから。火傷に気をつけてくださいね」

「はーい」


 園児たちが、元気よく返事をしました。


 さて、焼き作業ですよ。


 生地をおタマですくって、プレートに流し込みます。おお、罪の音ぉ。じょわあああ、といい音がしますよ。


 ソナエさんが、たこ焼き返し用のピックで生地を切っていきます。


「さて、生地にタコを入れていきましょう」


 タコの切り身を、焼いた生地に入れていきました。コンニャク、チーズなど、思い思いの具材を入れていきます。おおっと、チョコを入れようとしている子がいました。それはおやつ用のたこ焼きで試しましょうねー。


「うわあ、これ何人前できるんだ? この人数でもさばききれねえ」


 ソナエさんが、ゾッとした顔になっています。


「何人前でもいいさ。屋台だけではなく、据え置きの店にも出してもらおう」


 腰に手を当てながら、ドローレスが配下に指示を出しました。我々だけで食べられるブン意外を、パーク内の店で振る舞っていただきます。


「おっ、国王も屋台を引っ張ってきたよ」


 なんと、国王夫妻まで屋台を持ってきたではありませんか。


「ドローレス殿、こちらは任せてもらおう。民には我々がたこ焼きを振る舞おう」

「ありがたいね。楽しんでおくれよ」


 あちらは、家族水入らずで楽しんでいただきましょうかね。


「おっ、やってるな」


 ミュラーさんご一家も、見物に来てくれました。


「やらせてもらっていいかな?」

「ぜひぜひ。楽しんでください」


 園児たちのいるスペースに、ミュラーさんを混ぜてもらいます。ミュラーさんの娘さんのホリーさんは、園児たちと歳が近いですから。


「クリス、もうひっくり返していいぜ」


 おっ。ではさっそくクルッと参りましょう。


 クルクルっと。おお、カリッカリに焼き上がっています。これでまた、しばらくお待ちいただいて。


「クリス、そんな真剣な目で、見なくていいっての」

「ですが、最高のものをお出ししたいじゃないですか」

「雑でいいんだよ。それが、タコパの醍醐味だぜ」


 それもそうですね。



 さて、焼き上がりました。


 みなさんで、いただきましょう!

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