第25話 オスカー様とギルバート様は意外と馬が合うようです

オスカー様とギルバート様と一緒に王宮の門まで向かい、馬車へと乗り込んだのだが…


「アメリア、こっちが空いているから俺の隣においで」


何を思ったのかギルバート様が隣に座る様、私に声を掛けて来たのだ。


「ギルバート殿下、申し訳ございませんが、アメリアは私の婚約者ですので」


そう言って私を隣に座らせたオスカー様。


「俺は客人だ!客人の言う事は聞くべきではないのかい?」


「客人なら尚更お1人でゆっくりお座りください」


なんだか不穏な空気が流れて来たわ。それならば!オスカー様の手を引き、ギルバート様の隣に座らせた。


「アメリア、何をするのだ!」


抗議の声を上げるオスカー様。


「だって、こんな事で揉めていても仕方がないでしょう?これなら平等だとは思いませんか?」


にっこり笑って2人に伝えた。結局オスカー様とギルバート様が、隣同士に座る事で落ち着いた。でも、なぜか2人共物凄く難しい顔をしている。とりあえず、スルーしておこう。


「ギルバート様、今日は港を見てみたいとおっしゃっていましたよね?」


「ああ、港の街は貿易を行う上で重要な拠点だからね。しっかり見ておきたいと思って」


さすが王子だけの事はある。国の利益になる事を考えて、観光をしているのね。そういえばクレープを食べていた時も、自国に帰ったら取り入れたいと言っていたものね。



「そうそう、アメリアは商船に乗って色々な国を回ったと言っていたね。俺も14歳から4年間、他国を見て回って来たんだ!」


「まあ、そんなに長い期間を他国で過ごされたのですか?」


4年だなんて、凄いわ!きっと私がまだ行ったことも無い国々も回ったのよね!


「そうだよ!一番良かったのは、セレルド王国という国だ。あそこには珍しい動物が沢山いてね。羽の生えた馬や空飛ぶ魚なんかもいるんだ!花まで言葉を話すんだ!面白いだろう?あとスーレス王国、あそこはね。妖精と人間が一緒に生活をしているんだよ。妖精が物凄く可愛くてね」


「まあ、そんなおとぎの国の様な世界があるのですか?」


セレルド王国もスーレス王国も、ファビアナに借りた世界の本には載っていなかったわ。あの本に乗っていない国も、もしかしたらまだまだ沢山あるのかもしれないわ!



「ああ、ただこの国々に行く為には船で半年くらいかかるからね。行くのが大変なんだ。世界は本当に広いんだよ!正直、俺もまだ行ったことが無い国が沢山あるんだ。この国の訪問が終わったら、また旅に出るつもりでいるよ!」


その後もギルバート様は、色々な国の話をしてくれた。どれも興味深くて、聞いているだけで楽しい。あぁ、私もいつか行って見たわ…羽が生えた動物や妖精さんにも会ってみたい!でも、さすがに片道半年は無理よね。それでも、他の国はいけそうね!やっぱり、何とかオスカー様を説得して、学年末にファビアナの商船に乗せてもらえないか、もう一度お願いしてみよう。


そう言えば、さっきからオスカー様は全く言葉を発していない!気になってふとオスカー様の方を見てみると…物凄く不貞腐れた顔をしていた!


きっと話に入れないから、ご機嫌が悪いんだわ…昔のオスカー様はあまり顔に出さなかったけれど、最近は露骨に顔に出ている事が多い。もしかしたら、これが本当のオスカー様なのかもしれないわね。そう思ったら、なんだかおかしくて笑ってしまった。


「どうしたんだい?急に笑い出して?」


オスカー様とギルバート様が、2人揃って首を傾げている。全く同じしぐさをした2人を見たら、さらに笑いが込み上げる。


笑っている間に、どうやら港に着いた様だ。


馬車から降りると、懐かしい風景が目に入った。この港は、ファビアナと一緒に商船に乗った場所だ。今日も沢山の船が並んでいる。あら?あの船、私が乗った船によく似ているわ!


「さすがカルダス王国一番の港だけあって、とても賑わっているね。迷子になったら大変だ」


そう言うと、ギルバート様が私の手を掴んだ。


「殿下、アメリアは私の婚約者です!気安く触るのはやめて頂きたい!」


そう言ってギルバート様から私を引き離そうとしたのが…


「オスカー殿、まだ書面上は婚約者ではないのだろう?それに、そんな小さな事をグチグチ言うような器の小さな男だと、アメリアに嫌われちゃうよ。それじゃあ行こうか」


涼しい顔で歩くギルバート様に右手を、顔を真っ赤にして明らかに怒っているオスカー様に左手を引かれ、街の中心部に向かって歩いて行く。


カルダス王国一番の港街という事もあり、市場もかなり賑わっている。新鮮な魚介類を始め、真珠や珊瑚、貝殻を使ったアクセサリーも所狭しと並んでいる。


「随分と安価な値段で魚が売られているのだね。我が国の半値以下の値段だ。それに、見たことも無い魚が並んでいるぞ。この大きな魚は一体何なんだ?」


「これはマグロです。こっちは鮭!他にも色々な魚があります。そうだ、近くに新鮮な魚を色々な料理にして食べさせてくれるお店があります。少し早いですが、食事にしましょうか?」


「へ~、そんな店があるならぜひ食べてみたいよ。早速案内してくれるかい?」


ギルバート様も興味を持ったようだ。さすがオスカー様。何だかんだ言って、しっかり案内役を務めているわ。それに比べて私は…もっとしっかりしないと!


3人で食堂へと向かう。ここは市民が利用するお店の様で、沢山の市民たちでにぎわっていた。それにしても、オスカー様はよくこんなお店を知っていたものね。どうやって調べたのかしら?


案内されたテーブルに座り、店員さんおすすめのメニューを片っ端から持ってきてもらう事にした。


次々とテーブルの上に料理が並ぶ。魚のサラダ、カルパッチョ、アンチョビ、ムニエル、海鮮シチュー等、色々な魚料理が出て来た。せっかくなので、3人でシェアしながら食べた。


「へ~、魚と言っても本当に色々な料理があるんだな!どれも物凄く美味しいよ。家の国も海があるのだが、果物が豊富なせいかあまり魚は食べなくてね。これを機に、わが国も魚料理を充実させるのも良いな」


そう言いながら、魚を頬張っている。確かにパッショナル王国は果物が美味しいものね。食後はまた3人で市場を見て回った。前回商船に乗る為に来たときは、ほとんど街を見ることが出来なかった。その為、物凄く新鮮で面白い!



せっかくなので、ファビアナやお母様達に、真珠と珊瑚のアクセサリーをお土産に買った。


最初はオスカー様が暴走しないか心配していたが、全くそんな事はなく、むしろギルバート様を楽しませようと、街を色々と案内していた。時々私の存在が忘れられているのではないかと思う程、2人で盛り上がっている場面も度々目撃した。



頭脳面でも圧倒的にオスカー様に劣る私は、完全にオスカー様に完敗だ!なんだか悔しわ!次は私もしっかり勉強しておかないと!


そして無事王宮へと戻って来た私達。


「今日はとても有意義な時間を過ごす事が出来たよ。オスカー殿、君の知識の豊富さには驚いた。さすがだね!今日は君に会えてよかったよ。それじゃあアメリア、オスカー殿、今日はありがとう。また今度」


そう言うと王宮内に入って行った。


「それにしても、オスカー様には完敗ですわ。本当に完璧に案内をするのですもの!私なんて、居なくても良かったくらいでしたわ」


「いいや、そんな事は無いよ!でも、今日ギルバート殿下に会えてよかった。とにかく、これからもギルバート殿下を案内する時は、僕も一緒に行くからね」


そう言うと、唇を塞がれた。どんどん深くなっていく。やっと解放された頃には、ぐったりだ。


「アメリア、君は僕から離れて行かないよね?」


なぜか真剣な眼差しを向けるオスカー様。一体どうしたのかしら?


「ええ、もちろんですわ!もうすぐ正式に婚約も結び直せますし」


オスカー様の目を見てはっきりと告げると、今度は私の胸に顔を埋めて来た。本当にどうしたのかしら?でも、甘えて来るオスカー様もなんだか可愛いわね。


オスカーの頭を優しく撫でるアメリアであった。





~あとがき~

今回ギルバートに会って、ギルバートがアメリアに好意を抱いている事を確信したオスカー。さらに、2人が他国の話で盛り上がっている姿を目の当たりにして、アメリアは自由に他国を回る事が出来るギルバートに付いて行ってしまうのではないかと、物凄く不安を抱いているオスカーなのです(;^_^A

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