第5話 僕の為に婚約を解消するだって!そんな事させるものか~オスカー視点~

翌日、はやる気持ちを抑え早速アメリアの家に向かった。でも、アメリアは出掛けていると言われてしまった。


一体どこに行っているのか聞いたが、“私共にもよくわかりません!”そう言われてしまった。そもそも僕は婚約者だ!黙って出掛けるなんて、最近少しアメリアを自由にしすぎた様だ!


これを機に、もう少しアメリアの行動をしっかり把握する必要があるな。とにかく、伯爵家で待たせてもらおうと思ったのだが、なぜか断られた!一体どういう事だ!そもそも、アメリアは一体どこに行ったんだ!


一旦屋敷に戻った。じっとしていてもイライラするだけなので、竹刀をふるい体を動かす。それでもやっぱり、考える事はアメリアの事ばかりだ!


すっかり日が沈んだ頃、さすがにアメリアも屋敷に帰っているだろうと思い、伯爵家に向かう為玄関を出た。


すると、なぜかアメリアの父親でもあるリーファス伯爵と出会った。


「やあ、オスカー。ちょうど君に話があって来たんだ。そうそう、侯爵はもう帰ってきているかい?」


「僕にですか?父も帰ってきていますが」


一体何の話だろう。僕は伯爵なんかと話したい訳ではなく、アメリアと話したいのに!そう思いつつ、近くに居たメイドに父上を呼び出してもらう様依頼をした。


居間で待っていると、父上もやって来た。


「やあ、急にどうしたんだい?」


父上と伯爵は貴族学院の時からの親友だ!ちなみに、母親同士も仲良しで、お互いの子供を結婚させようと決めていたらしい。


「突然訪ねてきてすまないね。ちょっとアメリアの事で相談があってね。その前にオスカー、君に聞きたいことがあるんだが」


「僕にですか?」


一体何の話だろう。


「実はアメリアの話では、君は侯爵令嬢のミア・バッカーサル嬢と恋仲の様だね」


は?今なんて言った?


「伯爵、一体何を言っているのですか?僕がミア・バッカーサルと恋仲だって?そんな事、ある訳ないじゃないですか!僕が愛しているのは、アメリアただ1人です!」


伯爵に向かってはっきりそう告げた。


「そうか…でも、アメリアはそうは思っていない様だよ。君はアメリアには騎士団への見学を禁止したにもかかわらず、ミア嬢には毎日見学に来てもらっているみたいだね。それに、貴族学院でもアメリアの事はそっちのけで、ミア嬢とずっと一緒に居るみたいじゃないか!今日、他の貴族にも確認したが、本当の様だね。完全に君たちが付き合っていると思っている貴族も多いようだよ」


「そんな…僕はそんなつもりであの女と一緒に居た訳ではありません!僕はただ、アメリアに嫉妬して欲しくて…それに、騎士団の見学も、あの女が勝手に来ていただけですし…」


あり得ない!まさか学院内でもそんな噂になっていたなんて…もしかして、アメリアも僕たちの仲を疑っていたのか?


「それでだね、アメリアが君との婚約を解消したいと言っているんだ。既に、新たな婚約者を探すと張り切っていたよ」


何だって!婚約を解消?新たな婚約者を探す?そんな事、絶対に許す訳ないだろう!


「ちょっと待ってください!確かに僕のやった事は浅はかでした!それについては今後償っていきます。だからって、婚約を解消したいだなんて!とにかくアメリアと話しをさせて下さい!今家にいますよね」


もしかして今日いなかったのは、男に会いに行っていたからなのかもしれない!クソ、僕は一体何をしていたんだ!くだらない理由でアメリアを傷つけ、さらに野放しにしていたなんて!急いで伯爵家に向かおうとしたのだが


「アメリアは屋敷にはいないよ」


伯爵が僕にはっきりと告げた。

屋敷に居ないだと?


「伯爵、屋敷に居ないとはどういう事ですか?まさか、既に他の男の元に…」


体中から沸きあがる怒りを必死に抑え、何とか冷静さを保っている状況だ。


「それがね、今日から2ヶ月間、ミルソン伯爵家の商船に乗って、ファビアナ嬢と旅に出たよ。君のと婚約解消で傷ついたから、傷心旅行だそうだ」


2ヶ月間、商船で旅にだと…だから空に浮く街とか言う話で盛り上がっていたのか!今回きっとそこにも立ち寄るんだろう。とにかく他国なんて危険な場所に、アメリアを置いておけない。


そもそも、今は1秒だってアメリアから離れたくはないんだ。それなのに、2ヶ月も会えないなんて耐えられない!何より、アメリアは僕との婚約を解消したと思っている。もしかしたら、他国の男と一緒になりたいと言いだすかもしれない!そんな事は許さない!


「伯爵、話はわかりました。ですがアメリアと婚約を解消するつもりはありません。それから、至急ミルソン伯爵と連絡を取り、アメリアを迎えに行きます!それでは、僕はこれで」


「待ちなさい、オスカー」


急いで部屋から出て行こうとした僕を止めたのは、今までずっと沈黙を守っていた父上だ。なんだよ、このクソ忙しい時に!


「お前は自分がやった事に、何とも思わないのかい?どんな理由であれ、他の令嬢と噂になる様な事をして、アメリアを傷つけたのは事実だ。お前はアメリアと婚約する時約束したよな。“アメリアを必ず幸せにする”と。その約束を守れなかった今、婚約を継続したいと言うのは、お前の我が儘だ!リーファス伯爵、息子が本当に申し訳なかった。婚約は一旦解消してもらって構わないよ。家が約束を破ったのだからね。ここははっきりとケジメを付けないと」


「父上!」


「お前は黙っていなさい!でも、もしアメリアが帰国して、その時こんなバカな息子でも再度婚約してもいいと言ってくれるなら、その時改めて婚約を結ばせてもらえないだろうか?」


そう言って頭を下げた父上。


「うちは別に構わないが…それにしても、お前は相変わらず堅いな。まあ、そう言う真面目なところが良いところでもあるのだが。では、とりあえず婚約は解消という事で良いんだな?」


「ふざけないでよ!そんなの嫌だよ!やっとアメリアを手に入れたのに、絶対に手放したくない!僕は絶対に婚約解消なんてしないから!」


「お前がいくら騒いでも、これは決定事項だ!己の行いを反省しろ。それから、もしアメリアが帰国して、お前との婚約を結び直したくないと言ったら、その時は男としてしっかり受け止めろよ!」


こいつ、何をふざけた事を言ってやがるんだよ!その後も僕は必死に抵抗したが、父上たちは折れることなく、このまま婚約が解消されてしまった。

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