第4話 僕の最愛の人アメリア~オスカー視点~
僕の名前はオスカー・サマーグレンド。サマーグレンド侯爵家の次男として生れた。そんな僕には、子供の頃から大好きな幼馴染が居る。彼女の名前は、アメリア・リーファス。水色の髪にピンク色の瞳をした、それはそれは可愛らしい女の子だ。
正直、昔はいつも僕の後を付いて来るアメリアが鬱陶しいと思っていた。そんなある日、いつもの様について来るアメリアが嫌で、2人きりで行った森のお花畑に、アメリアを置いて帰って来た事があった。これで僕に付きまとう事はもうないだろう、そう思っていた。
それにあそこのお花畑は家からすぐ近くだ。すぐに戻って来ると思っていたのだ。でも、いつまでたっても戻ってこない。アメリア付きのメイドたちが騒ぎ出した。本当にアメリアはどんくさいんだから。そう思いながら、アメリアを見に行くと、どうやら泣き疲れたのか、木の下で眠っていた。
その姿を見た瞬間、一気に血が沸き上がる様なそんな感情を抱いた。さすがにこのままにしておくと風邪をひく、そう思い起すと、ゆっくり目を開けるアメリア。
僕と目が合った瞬間、それはそれは嬉しそうに微笑んだのだ。その笑顔がまた可愛くて、再び一気に血が沸き上がるのを感じた。
この子が欲しい!この子を誰にも取られたくない!そんな思いが、僕の心を支配していった。その日以来、僕はアメリアに夢中だ。正直アメリアさえいれば、他に誰も要らない。
だから僕は、アメリアの父親でもある伯爵に、アメリアと婚約させてほしいと頼んだ。でも、なぜか難色を示す伯爵。
「オスカーの気持ちは嬉しいが、アメリアはテオと婚約させようと思っているんだ…」
申し訳なさそうにそう言った伯爵。何だって、兄上と婚約させるだって!ふざけるな!アメリアは僕のものだ。兄上なんかに渡さない!
すぐに父上と兄上に泣きながら訴えた。
「僕は誰よりもアメリアを愛しているんだ!アメリアの為なら、どんな努力も惜しまないよ。だから、僕とアメリアが婚約出来る様に、伯爵を説得して!」
いつも我が儘を言わない僕の願いを、父上と兄上が聞き入れてくれ、伯爵を説得してくれた。
その結果
「わかったよ!オスカーがそこまでアメリアを大切に思ってくれているのなら、アメリアを君の婚約者にすることにしよう。ただし、約束して欲しい。アメリアを必ず幸せにするって」
「もちろんだよ!アメリアの婚約者として恥ずかしくない様、騎士団の訓練も頑張るし、勉強だって一生懸命するよ!」
こうして9歳の時、アメリアとの婚約が成立した。アメリアと婚約して以降、騎士団の稽古も今まで以上に頑張った。強い男になって、アメリアを守る為。さらに、勉学も頑張った。そもそも僕は、侯爵家の次男だ。
侯爵家を継ぐことはないが、子供のいない叔父上の伯爵家を継ぐことが決まっている。賢い伯爵になって、アメリアには何不自由ない生活を送って欲しい、その一心で頑張ってきた。
もちろん、アメリアとの時間も大切にした。アメリアは感情豊かだ。僕にも相変わらず懐いている。でも、アメリアは少し鈍感な部分がある。
特に騎士団内でも、美しく明るいアメリアの人気は非常に高く、騎士団に見学に来ては男共に話しかけられている。基本的に愛想が良いアメリアは、増々男共に気に入られると言う悪循環だ。それが嫌で、ついに騎士団への見学を遠慮してもらう事にした。
正直、こんな事を言ってアメリアに嫌われないか心配だったが、どうしても我慢できなかったのだ。そもそも、なぜかアメリアは僕の事を紳士的な男だと思っている。でも、僕はそんな男じゃない。それでもアメリアに嫌われたくなくて、必死で紳士を装った。とにかくアメリアに嫌われない様にと、必死だった。
そんな中月日は流れ、僕達は貴族学院に入学する事になった。なぜか令嬢たちに物凄くモテる。はっきり言って、“ウザイ”以外何者でもない。
さっさとあしらおうと思っていたのだが、いつもニコニコしているアメリアが、珍しく頬をぷっくり膨らませ
「オスカー様、あまり他の令嬢と仲良くしないでください」
そう抗議してきたのだ。その顔が可愛いのなんのって
調子に乗った僕はアメリアの前で、わざと他の令嬢と仲良くする様になった。そのたびに、アメリアはぷっくり頬を膨らませて抗議の声を上げる。
なんて可愛い生き物なんだ!最近では、ミアという令嬢と一緒に居る。特にこの女に興味がある訳ではないが、アメリアに嫉妬させるにはちょうどいいと思ったからだ。
そんな日々を過ごしているうちに、気が付くと半期休みを目前に迫っていた。いつもの様に、アメリアに見せつける様に、ミアと仲良くしていたのだが、あまり反応が無い。
一体どうしたのだろう…
不安になり、ミアと2人でアメリアに近づいた。どうやら、親友のファビアナ嬢と、空に浮かぶ街の話で盛り上がっていた様だ。
アメリアが行きたいなら、今度連れて行ってやろう。そう思っていると、その話を聞いたミアが、隣で自分も行ってみたいと言い出した。
是非勝手に言ってくれ!そう思ったのだが
「それじゃあ、ぜひお2人で訪問してみてはいかがですか?きっと素敵な場所ですよ!それじゃあ、私たちはこれで」
にこやかな笑顔で去って行こうとするアメリア。もしかして、僕への興味が無くなったのか?そんな不安から、腕に絡みついてるミアを振り払い、アメリアに今日デートをしようと誘ったのだが、ファビアナ嬢と用事があると言って、断られてしまった。
アメリアは他に楽しい事があると、そっちに集中してしまう癖がある。きっと、ファビアナ嬢との約束が楽しみだったのだろう。そう思う事にした。
でも、もしかしたらやりすぎたかもしれない。そう言えば、最近はいくら僕が他の令嬢と一緒に居ても、抗議の声を上げなくなってしまったな。それに、いつの間にか大切なアメリアとの時間が随分減ってしまった気がする。
明日から半期休みに入る。せっかくだから、アメリアを連れて、僕が継ぐ予定になっている伯爵領に連れて行こう。その間はずっとアメリアと一緒だ!そう考えたら、早くアメリアに会いたくなってきた。
そもそも、いくらアメリアが嫉妬してくれたからって、興味のない令嬢と一緒に居る事は、ストレス以外何者でもない。僕は一体何をやっていたのだろう。半年近くもアメリアと一緒に居れた時間を無駄にしてしまった。
これからは、1秒だって無駄にするものか!明日、早速アメリアに会いに行こう。そして、領地に連れて行く話をしよう。
きっとアメリアも喜んでくれるはずだ!
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