第22話

〜朝 アレストの部屋〜


「軍師サン、半年前にストワードでやった戴冠式を覚えているか?」

部屋の奥の玉座に座ったアレストが問う。

「忘れるわけない」

ルイスはあの戴冠式の帰りに敵の攻撃を受けて気を失い、半年間目を目覚まさなかったのだ。

「くっくくく……そりゃあそうだねェ。……実はあのとき戴冠を受けたストワード現国王アントワーヌと俺はこの半年間でマブダチになってねェ……もう何度もシャフマで夜を共にしているのさ」

足を組んで言うアレスト。冗談なのか本当なのか分からないが、この「夜を共にする」の意味は一緒にお酒を飲んで寝落ちた、の方だろう。

「あ、バレたか?ギャハハ!!あいつには妻がいるから手は出さないさ!それにそもそもそんなにタイプではないしな。俺は女なら誰とでも寝れる自信があるが、好きな男のタイプはハッキリしている方でねェ……細身で背が高くて自分よりも年下の男が好きなのさ。ま、金を積まれたらそんなこと関係なく誰とでも寝るが」

「……」

「あ、悪いね。あんたには刺激が強かったか。ふふふ……」

「女好きなのは知っていたけど男も好きだとは……」

知らなかった。そう言うとアレストはまた破顔する。

「ギャハハ!!そうさ!俺は気持ち良ければなんでもいいぜ!」

「……」

「……ふぅ、いやそういう話じゃなかったぜ。くっくく……俺としたことが……」

「何の話をしたかったの?」

一頻り笑って落ち着いたアレストに続きを促す。

「そのストワード国王アなんとかサンが、珍しく俺を呼び出したのさ」

「ストワードに?」

「あぁ。来てくれ、と」

アレストが大きく開いた胸元から紙を取り出す。デジャヴだ。

「今度はしっかりア……あ、書いてあったぜ。アントワーヌさんからの招待状さ」

ウィンクをして招待状にキスをする。アントワーヌが見たら卒倒しそうだ。いや、自分の書いた招待状を胸元に収納されているところから知ったらまずい気がする。

「で、行くことにしたのさ」

「行くことにしたの?」

「もちろん国民には内密にねェ……騎士団の一部は連れて行くつもりだぜ。軍師サンも一緒に来てくれないか?」

「いいけど、砂時計は大丈夫?」

「だ、か、ら……」

アレストが玉座から立ち上がって前屈みになり、ルイスの顔を覗き込む。

「軍師サンに守ってもらうのさ。いいだろ……?」

「わかった」

「ふふふ……」

満足したのか、顔を離してまた玉座に腰を下ろす。

「今回、アントワーヌは俺に砂時計の話をしたいと言ってきた」

「……!」

「シャフマ人以外でも砂時計の存在を知っている人は当然いるさ。なんてったってこの国の成り立ちだからねェ……いわゆる神話ってやつさ。しかし、そんな国の歴史だけを語るならばシャフマ王宮の地下にあるバーで飲みながらすればいいだろう?おそらくアントワーヌは砂時計の呪いに関する情報を掴んだのさ。対抗策だといいが……」

「シャフマでは出来ない話?」

「勘がいいじゃないか、軍師サン。敵側に聞かれたらヤバいんだろうねェ」




〜翌日 シャフマ王宮近郊〜


「では、気をつけて向かいましょう。ぼっちゃん、あなたの命が最優先ですからね」

リヒターが伸びをしているアレストに言う。

「分かってるさ」

「ストワードへは距離がある。砂の賊がいたら斬って進むぞ」

メルヴィルの言葉に皆が頷いた。



【賊討伐です】

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