ep30 クリスマスアフター<2>

美波の店番の時間が終わり、先にオレは美波の部屋に通されていた。ここに来るのは、5回目くらいだろうか? 大体デートはどこか外に出かけることが多かったからなぁ。でも、これで終わりだ。


美波がお茶を淹れてきた。


「ありがと」

「ふへへ」

「美波さ、だいぶ笑うようになったよね」

「そうかな? それだけ、わたしは幸せなんだよ」

「そっか」


こう言われてはどう別れを切り出したらいいかわからない。しばらく、沈黙が走った。


「あのさ」

「んー?」

「神戸いって、美波が倒れた時、救急車呼んだのはオレじゃないんだ。救急車を呼んでくれたおじさんに言われたんだ。「彼氏失格」って。それに、オレは学校でのクリスマスパーティーのとき、美波のクラスメートの池内さんとちょっと関係持ったんだ。オレに気持ちはなかった。でも、あの時は、雰囲気と快感に負けて……」

「そっか」

「オレ、ホントに思うんだ。オレは美波の彼氏失格だなって」

「それは、池内さんと付き合うってこと?」

「違う!! それは絶対ない!!」

「そっか」

「あのさ、別れよう……」

「それは嫌だって言ったら?」

「そんなの、オレも嫌だよ。美波と別れるなんて!! でも、ダメなんだ」

「ダメって?」

「美波が傷つくのを見たくないんだ」

「別れたいのに?」

「う…ん。でも、別れたくない。ずっと美波といたい!! こんなに人を好きになったのは初めてなんだ」

「じゃ、別れないでいよう。わたしも蒼空くんのことが大好きだよ」

「でも、またデートしてる時に体調悪くなったら……」

「ふふっ、大丈夫だよ。あの日は朝からわたし体調悪いのに無茶したからだよ」


美波からオレを優しく包み込んでくれた。思わず、オレは大粒の波を流した。


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