第3話 そもそもSFってなんぞ??

 SFというジャンルが勃興したのは、1926年にアメリカで創刊された「アメージング・ストーリーズ」が初出と言われている。

 それ以前としては、既に2世紀の頃に既に存在し、古代ギリシアの風刺作家ルキアノスが「本当の話」と「イカロメニッパス」と言われている。

 2世紀で月旅行という概念は既に生まれていた。


 周知の存在としては、アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラーク、ロバート・A・ハインラインであろう。


 ただ、現在ではSF作家と銘打った小説家は非常に少ない。

 理由としては、SFは映像作品のジャンルに昇華移行している背景もある。

 何よりも、SFとなると想像力がかなり求められる。

 現代が舞台の小説だと、現実の身近な物が当たり前にある物語になるので想像力を働かせるのは登場人物の容姿や会話に集中すればよい。

 ホラーも現代が舞台の場合でもかなり想像力を求められる傾向のある作品はあるが、これは非現実的な内容にもかかわらず“シチュエーションが高まりやすい表現”が如実に盛り込まれている為、想像しやすい。

 中世ファンタジーや異世界ファンタジーも、現実の歴史の文献や挿絵資料などからインスピレーションを受けたものが多々あり、事前情報ありきの状態で臨む事が出来る。言うところの“前提情報が用意されている想像力”ともなり得る。


 ただし、SFは未来志向が非常に多い。

 更に現実には存在しえないであろう科学技術が実装された世界を描いている物もある。

 宇宙旅行が当たり前だったり、異星人は普通に一般生活に溶け込んでいるし、なんだったら巨大生物に頭を悩まされる事だってある。

 一番想像しやすいSFと言えば「ドラえもん」が良い例かも知れない。

 150年後以上の世界なんて誰にも想像出来ないし、見て確認する事なんて勿論不可能。それが故の“目で見て楽しむ”事に特化したジャンルの性格を帯びて来た。


 「ドラえもん」に必ず毎話出てくる秘密道具。

 “どこでもドア”は言わば、“移動対象者の身体を粒子分解し、移動先で身体の記憶情報を再構成”だったり、“お手軽なテレポーター”とも言える。

 “スモールライト”は、“特殊な光源を全身に当てる事により制限時間を設けて細胞の縮小化を行う”と言った具合。

 “タイムマシン”も実に顕著で、時空間を超えて任意の時代と時間軸に移動する事が可能。


 小説でこれを全て文章化すると、途中で読むのを止めたくなるくらいに、余りにも長くなる。

 とにかく“前提情報を仕入れる事を求められる”ジャンルになる為、昨今ではかなり敬遠されがちな節もある。

 それが故の、“視覚に訴える媒体”への昇華。

 「ドラえもん」は正に、これだけ長ったらしくなる情報量の文章を、たった数秒の映像で済ませている。


「子供向けなんだからこまけー説明なんざいらねえんだよ!」

 とどこからか言われそうだが、現実的に「ドラえもん」をマジメに文章化するとそう言う事になる。


 子供向けにザックバランな描写で済むなら良いが、実際“大人向けのSF”となったらどうなるだろうか。

 「ドラえもん」の小説化では済まないレベルでの活字情報量が発現する。


 戦うファンタジー物で、持たされる武器は剣や弓矢、斧や槍と言った具合で、魔法は少し表現を足すだけで想像しやすい文章の構築が可能。

 ただ、SFで持たされる武器は、ライトセーバーに代表される光学剣、ビームライフルに代表される光線銃と言った具合に、


「光学ってなんぞ??」


「熱だけでどうやって撃ち抜くの??」


 と言う具合に、一つ一つに疑問を持ってしまってわからなくなってしまう。

 その分、これを映像で表現すると、これも「ドラえもん」と同じく僅か数秒で終わってしまう。


 決して“読者側の想像力の欠如”ではなく、“求められる想像力のキャパオーバー”も問題とも言える。

 これはおそらく、SF小説ではもう解決しきれないだろう。


 ただ、ジャンルが確立して100年近く経った今でも、明確な細分化がされていないが、よく見ると完全にSFから独立しきっている。


 SFから派生したジャンルとしては、

・スペースオペラ:「スターウォーズ」「銀河英雄伝説」「宇宙戦艦ヤマト」等

・特撮:「ゴジラ」「ウルトラマン」「仮面ライダー」

    「スーパー戦隊」「トランスフォーマー」等

・ハードSF:「攻殻機動隊」「日本沈没」等

・歴史SF:「戦国自衛隊」等

・破滅SF:終末もののSF版「北斗の拳」「風の谷のナウシカ」等

・セカイ系:上述の“終末もの”の発展版

      「新世紀エヴァンゲリオン」「最終兵器彼女」等


 とどのつまり、SFは新ジャンルの土壌とも言える。

 現代モノや中世ファンタジーと異なるのは、“インスピレーション基ですらも想像の範疇”と言うところにある。

 どうしても映像作品には勝てない、というジンクスは出てくるが、その分“新しい切り口”の作品を生み出しやすい素材とも言える。


 現実での1000年後なんて誰もわからないし、未来にそもそも決定事項なんてない。自分自身の選択で現在が造られ、その積み重ねで未来が決まっていく。


 SFとは、色んな側面の未来指標図を持っている、とも言える。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る