派遣社員と巫女の戦國物語

@akihisa2142

プロローグ 祈りと日常

巫女は本堂の中、御神体の前に座り、祈りを捧げていた。

今日も世界が平和でありますように。

家族や集落のみんなが健やかに過ごせますように。

祈りを捧げる姿はまさに神域の存在。

少女は巫女として生まれ育った。

神職を全うし、課せられた役目を果たすために。

祈りを終え、少女はゆっくりと目を開ける。

今日、自分の16年の人生が終わりを告げる。

しかし、悔いはない。

そのために生きてきた。

この祈りが神様に届きますように。

そして

神の身元に帰れますように。

.

.

.

蒸し暑い工場の中、男はひたすら汗をかきながら作業をしていた。

手だけ動かす簡単な作業。頭より下しか使わない労働。

しかし、それは自分で決めたこと。

仕方がない。

そう割り切って、退屈な時間を妄想でやり過ごす。

とりあえず自分の周りだけでいいから、平和でありますように。

自分の家族とか彼女とか友達が怪我とか病気とかしませんように。

普段糞みたいな妄想をしている男も、たまにはそんな良い事を考えながら淡々と作業するその様はまさにそこらへんにいる派遣社員そのもの。

あぁ。退屈だ。

それでも今日は終わり、明日が来る。

だからとりあえず、生きよう。

平凡な日常に。

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