病院と秋

バブみ道日丿宮組

お題:オチは秋 制限時間:15分

病院と秋

「だいぶ減ってきたね」

 窓の外を見ながら少女がぽつりとつぶやく。

「季節の変わり目か」

 青年も窓の外を見る。そこには紅葉になった木があった。

 それは少女が病院に入ってから何度も見た光景。

「そうそう。とはいっても、ほとんど見てないから違いがあまりわからないかな。寝てることのが多いしさ」

「……ちゃんと見とけよ。これからも見られるかわからないのだから。この木は切られることが決まってるらしいしな」

「そうなんだ。桜の木に変わるのかな?」

 ふぅと一息。

「それでさ。よくある話だけどさ、この木の葉っぱが全部なくなったら死んじゃうかもってあるよね」

「そういう病気じゃないから安心しろ。なんなら何十年も生き残る可能性のが高い」

 青年は少女の手を握る。

「それセクハラだからね? 許可なく女の子の手をとるもんじゃないよ」

「今日は手の感覚はあるんだな」

 少女は難病だった。

 それは現代医学では治せない不治の病。原因も発病も不明。少女は突如として筋肉が落ち、次第に触覚を失いつつある。

「そうだね。今日はよく動かせる日かな。久々に自分でメロンが食べられるかも」

 ベッドの脇にある棚には、フルーツバスケットがあった。

 数日前に青年が買ってきたものだ。

「無駄にならないようでよかったよ」

「食べさせてもらえば食べれるんだけどね」

 あははと微笑む少女。

「やっぱり自分で食べたいものだよ」

「そうだよな」

 にぎにぎと青年は少女の手を揉む。

「触り方がイヤラシイよ。やっぱ身体目的?」

「……子どもは2人欲しいしな」

「そうだね。先生に許可取れたら、性行為ぐらいはしてみたいかも。どんな感じになるかすごく興味ある」

 少女はわくわくとした笑みへと変化させる。

「はじめてとさいごはあなたがいいからさ」

「光栄だな。通い詰めたかいがあった」

「あれ? 本当に身体目的だった?」

 えー、と少女。

「結婚することが決まってるのだから、いいじゃないか。それに来年退院することも決まってるんだし、一緒に住んでれば色々ある」

「そうかもね。でも、介護する一生は大変だよ」

「覚悟の上さ」

 

 そうして次の年の秋、少女は青年の家へと移った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

病院と秋 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る