東京の地平線

輝空歩

第一章 第壱話

無数の雲の間から垣間見える日の光が窓を伝って目に差し込んでくる。 もう朝か.. ゆっくり目を開けると汚いアパートの一室が視覚を埋める。 今何時だろうとスマホを手にとる. 枕が濡れている。 コインランドリーになんかいけないのにもかかわらず。 スマホの電源ボタンを押すと”ヴォン” と電子音が空気を震わせる。 画面の中心には細く白い12:31の文字が写っている。

 あ。。。もう昼か。。

体を転がす。 畳へと出る。 畳のきしむ音がする。今日はバイトの日だっけな.. じゃあ動かないとだ。 でも、動きたくない。 何もしたくない。このままきえちゃいばいいのに。 もしも願いが一つ叶うならば自分はそう願うだろう。でもそうはいかないのがこの現実だ。それを一番知っているのは私のはずなのに。 ジャージの素手を手に通す。

レコードプレーヤーの針をレコードに突き刺すと 音楽が流れはじめる。 ♪~ たとえ世界がどう変わっても、私がどうなっても、この円盤に刻まれた音楽は変わらない。 あの日も、今日も全く同じ音楽が流れている。このレコードを掛けると私はまだあの日の私みたいに感じられて心が休まる。

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