この前のお菓子 (短文詩作)

春嵐

この前のお菓子

「ねえ」


 彼女に声をかける。


「この前さ」


「無いよ」


 無いのか。


「それは残念」


 彼女を見つめる。彼女も、自分を見つめる。

 さて。


「はあ」


 根負けした彼女が、こたつのなかに潜り込む。


「ぷはっ」


 出てきた。


「ほらよ。特別だからな」


 この前のお菓子。いい具合に暖まっている。


「やった。ありがとうございます」


「わたしが独占するはずだったのに」


 でも、たぶん何も言わなくても出してくれたでしょ。そう言いたかったけど、やめた。やさしいのは、いつものことだから。でも、本人はくーるびゅーてぃーがいいらしいから。言わない。


「ううむ」


 彼女。またこたつにくるまる。くーるびゅーてぃーが暖まってるよ。

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この前のお菓子 (短文詩作) 春嵐 @aiot3110

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