夢のあとに

 過去には戻れないことはわかっていた—。でも過去は探ることはできる。さらにどの過去を探るかで未来は変化することに私は気づき始めていた。だからこそ、読む本を選ぶのにも慎重になる。


 そんなことを考えながら、私はゴーティエ・カプソンが奏でるガブリエル・フォーレの「夢のあとに」に耳を傾ける。ゴーティエが奏でるチェロの音色は美しい夢のあとの高揚感が空高く溶け込んでいくような瞬間の儚さを心に響かせる—。同時代に生きて、憧れの存在は今、この瞬間にすぐ近くにいて目の前にいても手が届かない。それでもその存在に気づけたことはある意味奇跡であり、尊い巡り合わせでもあると思う。


花冷えの空から

雨と一緒に

降り積もる

数々の思い出

記憶の花筏


※月刊『五行歌』2022年6月号 佳作

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る