第21話 教えて

 私が目を覚ますと目の前には闇しかなかった。けど、すぐにその闇の正体が分かった。

 クーちゃんに抱きしめられているから目の前に闇しかなかったのだ。

 おかしいな、私はクーちゃんを抱き枕にしていたはずなのにいつのまにか立場が逆転している。

 も、もしかしてクーちゃん、私のこと好きになってくれたのかな?

 そうだといいなー。まあ、多分そんなことはないんだろうけど。

 あー、どうしよう。クーちゃんが起きるまでこの状態を維持した方がいいのかな?

 それとも起こした方がいいのかな?

 私がそんなことを考えているとクーちゃんがこんなことを言った。


「やっと起きたか。もう離れてもいいか?」


「え? やだ」


 なぜ即答できるんだ。

 お前は死にかけたはずだ。しかも寝起き。

 頭が回るわけがない。


「クレア、お前本当に人間なのか?」


「……え?」


 寝言のことは言わない。

 クレア(モンスターハンター)の口から直接聞きたいからだ。


「私が回復魔法を使ってお前を治療していた時も思っていたが、お前の魔力量はほぼ無限に等しい。いったいお前は何者なんだ?」


「……さぁね。私もよく分からないんだよ。ただ、不老不死の研究をしていたお父さんがある日壊れたんだよ。私のお母さんとミーシャ……あー、ミーシャは私の妹だよ。でね、お父さんは二人を殺した後、二人の死体を小さくして私に食べさせたんだよ」


 魔力量が増えないなら他人の肉体と魂を食べさせてうつわを大きくすればいい。

 そうか。この女はある意味キメラに近いのか。

 同じ種族を食べさせることによって拒否反応や副作用をできるだけ抑制する。

 で、クレアの場合は血のつながりがある家族だったわけか。


「その日から私の魔力量はどんどん増えていったよ。生きているだけで魔力量が増えていくから私はもう人じゃないんだなって思った」


「そうか。それで、お前の父親は今どこにいるんだ?」


「実験が成功したかどうか確かめるために毎日拷問してたよ。私が何度やめてって言ってもやめてくれなかった。それどころかエスカレートしていったね。まあ、お父さんの拷問があんまり辛くなった頃、私はこの手でお父さんを……」


「もういい。つまりお前は不死身のモンスターハンターなんだろ? いいじゃないか、一生食っていけるぞ」


「嫌だよ、こんな体。私、あの日から五十年くらい生きてるのに私の体は全然老いない。ねえクーちゃん、私これからどうすればいいと思う?」


 私以外に不老不死となった人がいたとはな。

 まあ、あまり嬉しくはないな。が、こいつは戦力になる。

 よし、妖精狩りに参加させよう。


「……そうだな、別に私はいいと思うぞ。お前がどう生きようと私には関係ない。お前はお前のやりたいことをすればいい」


「そんなのないよ。私には生きる意味も生きがいも分からないんだから」


 それは誰にも分からない。

 分かっても大した変化はない。

 そんなものに頼ろうとするな。


「なら、私がお前にその生きる意味とやらをくれてやろう。いいか? お前はこれから私と一緒に妖精を狩るんだ。この世から妖精がいなくなるまで」


「それ、楽しいの?」


「さぁな。だが、一応私の使命だ。お前がただの人ならまず達成できないことだが、幸か不幸かお前は不老不死だ。いつかきっと成し遂げることができる。ハードルは高いができなくはない。そうは思わないか?」


「うーん……まあ、そうだね」


 よし、あと少しだ。


「よし、では共に行こう」


「別にいいけど、その前にクーちゃんのこと教えてよ。私、クーちゃんのことほとんど知らないからさ」


 この女、まだ私がキメラだということに気づいてないのか?

 はぁ……バカだ、アホだ、無能だ。

 不老不死でそこそこ戦えるだけのバカだ。

 さて、どこまで話してやろうかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る