第16話 目障り

 暗雲の中に何かがいる。

 何かいる。何かがいるということは分かっている。

 しかし、その何かが分からない。

 やつはずっとこちらを見つめている。

 何のために見つめているのかは分からないが、ずっとこちらを見つめている。

 今もなお、見つめ続けている。

 姿を現す気配はない。力を使う気配もない。

 偵察なのか監視なのか観測なのか、どれでもないのか。

 やつは何のために何をしに、今日この日この時間にやってきたのだろうか。

 目的はなんだ? この町に何をするつもりなんだ? まさかとは思うが、私の……いやこの町にいるやつらの命を奪いに来たのか?

 もしそうなら私に気づかれる前に町を襲撃しているはずだ。

 分からない、肝心な部分……根っこの部分、一番知りたいことが何一つ分からない。

 私はそんなことを考えながらクレア(モンスターハンター)と共に暗雲を見ている。

 いるだけで何もしない。ただそこにいるだけ。

 誰かに迷惑をかけているわけではない。

 しかし、目障りだ。

 青空を暗雲で隠すな。私はここに来たくなかった。

 できれば今すぐ帰りたい。しかし、それが……良くないものがここからいなくならない限り、私は帰ることができない。

 早く……早くどこかに行ってくれ。

 じゃないと私はお前を殺さなければならなくなる。


「失せろ……」


「え?」


「今すぐ失せろ! 目障りだ!!」


 私がそう言うと暗雲はそれに答えるかのように姿を消した。

 いったい何だったんだ? 私がそう言うのを待っていたのか? 私じゃなくても良かったのか?

 まあ、いい。とりあえずこれで買い物ができる。


「行くぞ」


「え?」


「やつはもういない。そして私はできるだけ早く帰りたい。だから……」


「分かった。じゃあ、行こうか」


「ああ」


 クレアは勝手に私の手を握ると服屋を目指して歩き始めた。

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