第13話 許可する

 クレアは私に『クー』という名前を付けた。

 別に名前などなくても生きていけるが、名前があった方が色々と都合がいいらしい。


「クーちゃん、体拭いてあげるよ」


「必要ない」


「え?」


「私の皮膚は常に私にとって不必要なものをはじいている。だから、いちいち体をきれいにする必要はない」


「えー、そうなのー?」


「そうだ。だが、まあ一度くらいは体験しておきたいと思って前から思っていた。だから、その……こ、今回は特別に許可する」


「照れてるクーちゃんかわいい! ねえ、ギュッてしていい? いいよね? ギュー!!」


「呼吸しづらいからやめろ。おい、聞こえないのか?」


「あー、クーちゃんの肌スベスベしてるー」


 ダメだ。私の声がまったく聞こえていない。

 仕方ない、しばらく好きにさせてやろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る