ずっと好きだった幼馴染の美少女をNTRされた。そんな僕を純情ギャルが慰めてくれる。

三葉 空

第1話 幼馴染をNTRされた

『しおりちゃん……これ』


『わぁ、きれいなお花。これ、わたしにくれるの?』


『う、うん……』


『ありがとう、じろうくん』


 君は小さい頃から、可愛くて。


『次郎くん、早くしないと遅刻しちゃうよ?』


『最近、少し太っちゃったかも……胸とか窮屈きゅうくつで』


『私、高校でも次郎くんと一緒が良いな』


 年を重ねるごとに、どんどんきれいになって行った。


 僕はそんな君のことが好きだった。


 だから、高校に入学したら、勇気をもって告白しようと思った。


 みんなから好かれて愛される君を、僕だけの物にするなんておこがましいけど。


 それでも、僕は……


「――はぁ~、きんもちぃ~」


 体調を崩して休んでいた彼女を見舞うために、彼女の家にやって来た。


 チャイムを鳴らしても中々出ず、カギが開いていたので、勝手にお邪魔した。


 まあ幼馴染で、小さい頃からお互いの家を行き来しているから、許してもらえるかなと思った。


 そして、彼女の部屋に入った瞬間……絶望が待っていた。


「はッ、はッ……」


 いつも清楚で可憐な彼女。


 僕の大切な幼馴染の美少女、片平栞かたひらしおりは。


 他の男とベッドの上で、汗だくになって重なっていた。


 既に事後だった。


 彼のことは見たことがある。


 同じ学年で、チャラ男として有名な……梶野桔平かじのきっぺいくん。


「……あん?」


 彼の目が、ドアの所で呆然と佇む僕を見た。


「あれ? お前、栞の幼馴染くんだろ? 戸川とがわ……だっけ?」


 梶野くんが言うと、ベッドに顔を埋めて吐息を乱していた栞ちゃんが顔を上げた。


「……次郎……くん?」


 息を弾ませ、汗をかき、髪は振り乱れている。


 相当、激しくやったんだろうか。


 否応なしに、想像をかきたてられてしまう。


「おい、こいつ立ってんぞ」


 梶野くんが僕の股間を指差して言う。


「じ、次郎くん……」


 栞ちゃんが口を手で押さえつつ、まじまじと見ていた。


 僕は何だか、とてもみじめな気持ちになった。


「あ、もしかしてお前、栞のこと好きだった?」


 梶野くんは言う。


「けどさぁ、栞はお前のこと、ただの幼馴染って言うからさ。もし俺がお前だったら、とっくの昔からハメ倒しているぜ?」


「や、やだもう、桔平きっぺいくんったら」


 ずっと、栞ちゃんは冴えない僕にも優しくて、僕に微笑みかけてくれていた。


 もちろん、優しくてみんなの人気者な彼女は、誰に対しても優しかったけど。


 それでも、僕だけは少し特別だと思っていた。


 けど、それは勘違いだった。


 だって、今こうして、栞ちゃんが梶野くんに向ける目は。


 今まで僕が1度も見たことがない、女の微笑みだった。


 ゾクリとした。


 後退あとずさる。


「あー、もう1発してえなぁ……悪い、戸川。ちょっと、出て行ってくんね? まあ、どうしても見たいって言うなら、見て行っても良いけどさ~」


「ちょ、ちょっと、桔平くん。それはさすがに……恥ずかしいから」


「良いじゃん。幼馴染に、成長したお前の姿を見せてやれよ。まあ、乳はCカップくらいで、まだまだだけど。これから俺がいっぱい揉んで、育ててやるからな♡」


 そう言って、梶野くんが栞ちゃんの胸に触れた。


「あんっ……」


 僕は唖然としながら、背中を向けた。


「おっ、帰るのか?」


「……うん」


 僕は頷いて、立ち去ろうとする。


「次郎くん」


 栞ちゃんが呼んだ。


「……ごめんね」


 そして、ドアを閉じる。


 直後、


「ああああぁん!」


 本当は耳を塞ぎたいくらいだ。


 けど、その気力も起きず。


 僕はゾンビみたいになりながら、すぐ隣の我が家に帰宅した。




      ◇




 翌日。


 制服を着て学校に行くフリをして、サボった。


 今までの人生で、そんなこと1度もなかったのに。


 ただ、僕はハメを外す気力もなく。


 公園のベンチに座って、ただ呆然としていることしか出来ない。


 目の前を親子連れが通った。


 お父さんとお母さん、そして子供が2人。


 とても幸せそうだ。


 僕はその人たちに、僕と栞ちゃんの明るい未来を重ねてみた。


 それはとても幸せな光景で。


 けど、すぐに崩れ去った


 涙もこぼれないくらいに、渇き切っていた。


 死にたいくらいだけど、自殺する度胸もない。


「お~い」


 誰かに呼ばれた気がするけど、気のせいだろう。


「お~いってば~」


 目の前でぶんぶんと手が振られる。


 何だ?


 と思った時。


 僕のメガネがひょいと奪われる。


「えっ? えっ?」


「へぇ~、意外と可愛い顔してるじゃん」


 女子の声だった。


 視界がぼやけて、誰なのかよく分からないけど。


 何となく、黒くて、うちの制服みたいなシルエットが見えて……


「あ、あの、メガネ……」


「ごめん、ごめん。はい」


 メガネを返してもらうと、僕は改めて目の前の人を見た。


「やっほ~」


 金髪、褐色、巨乳。


 その三拍子がそろった、いわゆるギャルがそこにいた。


 僕と同じ学校の制服を着ている。


「君さ、あたしと同じ学校の子だよね~? てか、あたしのこと知ってる?」


「あ、えっと……」


 まだ入学して1ヶ月くらいしか経っていないから、すぐに名前が……


「……あっ、須山亜里沙すやまありささん……だよね?」


 クラスは違うけど、目立つ存在だから知っていた。


 決して、胸だけの話じゃない。


「ピンポ~ン♪ せいか~い♪」


 ギャル子さんこと、須山さんは笑顔で指を立てて言う。


「ごほうびに、これをあげよう」


 すると、制服のはだけた胸元に手を入れた。


 僕はギョッとして、すぐに視線を逸らす。


「んしょっ、奥に入って……ほっ」


 何やら、変な声が聞こえるけど……


 ぴとっ。


「ひゃふっ!?」


「何それ、可愛いんだけど」


 須山さんは、くすっと笑う。


「これ、飲みなよ」


 僕のほっぺに当てられていたのは、350mlのペットボトルのジュースだった。


 いや、それは良いんだけど、何せ入れていた場所が……


「あ、大丈夫、ちゃんと冷えているっしょ? 知ってる? 脂肪が多い所って、冷たいんだよ。だから、おっぱいで保冷しておいたの」


「へ、へぇ~……意外と物知りなんだね、須山さん」


「えへへ~、でしょ~? って、意外とか失礼じゃない~?」


「ご、ごめん」


 間近で見ると、派手な金髪だけど……髪の質がきれいだな。


 染めている人は、みんな傷んでいるイメージだけど……


「ほらほら、早くあたしのおっぱいジュース飲んでよ~」


「お、おっぱいジュースって……」


「ていうか、となり座っても良い?」


「う、うん」


「ありがと」


 須山さんは僕のとなりに座った。


「よいしょっと」


 そして、また胸からジュースを取り出す。


 2つも入るとか、どれだけデカいんだ……


 こう言っちゃ失礼だけど、栞ちゃんの倍以上はあるぞ……


 って、僕は何を最低なことを……


 ズキン、と頭と胸が痛んだ。


「ていうかさ、いかにもマジメそうな君だけど……体調でも悪いの?」


「いや、その……ちょっと、学校に行く気分になれなくて」


「ふ~ん、そっか。あたしもまあ、そんな感じ」


 須山さんは笑いながら、ジュースを飲む。


「てか、君の名前は何だっけ?」


「あ、僕は戸山次郎とやまじろうです」


「ジローね。可愛い名前じゃん」


「そ、そうかな?」


 あれ? ギャルってちょっと怖いイメージだったけど。


 特に、僕みたいな冴えない男子のこととか、キモいって思っているかと……


 そうか、この人はオタクにも優しいギャルってやつか。


「で、ジローはさ、どうして学校に行きたくないの?」


「それは……」


 普通、いくら同じ学校の同学年とはいえ、ほぼ初対面。


 まともに喋るのが初めての彼女なのに……これまでのことを、みんな話してしまった。


 彼女は何も言わず、黙って最後まで聞いてくれた。


「……何それ、ひどっ」


「いや、僕が悪いんだよ。ずっと、モタモタしていたから……」


「でも、そんな君の想いを踏みにじる奴が最低だよ……ていうかさ、ごめん」


「えっ? 何で須山さんが謝るの?」


「いや、その梶野桔平かじのきっぺいって……あたしの元カレなんだ」


「ほ、本当に?」


 僕はまた、視界がぐらつきかけた。


「中学も一緒でさ、付き合うことになったんだけど……まあ、すぐに別れたよね」


「ど、どうして?」


「あいつ、平気で浮気、というか同時進行していたから。あたし以外に、彼女が7人? 8人くらいいた」


「す、すごいね……」


「いやいや、すごくない、キモいだけだよ」


「あ、そっか……ごめん」


「ううん、良いよ」


 須山さんは微笑む。


「ちなみに、別れた理由はもう1つあってさ。まあ、それが大きいんだけど」


「え、何?」


「あいつ、めっちゃ粗◯ンなんだよ」


 …………。


「……へっ?」


「あいつ、チャラ男のくせに小さいんだよ。それでもうきょうざめ。本番以外のテクはかなりあるんだけどね~。所詮、顔と口だけの男だから、即別れた。あたし処女だったんだけど、入れられても入ってんのかってくらい何も感じなくて。気付いたら終わっていた。もうあたしの初エッチの思い出、サイアク」


 須山さんはつらつらと当時の光景を思い出したかのように言う。


「だからさ、きっとジローの幼馴染ちゃんも、すぐに愛想尽かすよ」


「はは、そっか……」


 僕は乾いた笑いを漏らす。


 それでも、あの時の光景が頭から離れなくて……


「……ねえ、ジロー」


「えっ?」


「あたしのこと、どう思う?」


「ど、どうって……」


「おっぱい大きくて、可愛いって思う?」


「そ、それはまあ……」


「だったらさ、お詫びの気持ちも込めて……エッチしてあげる」


 一瞬、彼女が何を言ったのか、理解出来なかった。


「へっ……?」


「まだ、童貞なんでしょ? だったら……あたしで卒業させてあげる」


 須山さんは優しく微笑みながら、そう言った。







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