作弊(ズオビ)
やっぱりそうか、カンニングか。でも…
「何で帰国するんだ?EJTは中国大陸では試験が実施されていないのに」
そう、このEJTはアジア諸国では試験が行われているが、中国大陸では実施されていないと明記されていた。
「まさか…今回だけ特別に中国大陸でも受験できるようにしたとか?」
今はお互いの国を簡単には行き来ができない。もしその状態でEJTが行われたら、日本側の監督側の人間も入れないということになり、それにより試験を管理する日本側の職員が十分に監督ができない可能性がある。つまりカンニングができるってことか…。
「いや、EJTは今回の伝染病の件でも継続して中国大陸での開催はしてない。だから受けるとしたら香港に行く必要がある」
「なるほどな…。でも日本でその試験受けれるんだろ?」
「もちろん。日本でなら、都市以外の地方都市でも受けられる」
「日本でも受けれるし、受かったら日本の大学に入るんだよね。じゃあ…戻るのはカンニングするため?」
「話している内容だとそうだね」
と言って、希はタブレットを起動させて自動翻訳のアプリを開くと、“
「この
「そうそう。これは点数を保証するって意味だよ」
「え…保証?」
ただの学生のカンニングで保証なんてできる訳がない…つまり、これはビジネスなんだ。
「…どんどん話がでかくなってるな」
「
帝慶大といえば、有名私立の名前だ。
「5万6千元かあ…」
と希は言うと、携帯を取り出して、電卓のアプリを開いて数字を叩くと、
「えっと、だいたい100万円ってとこか」
「え、高っ!」
「そりゃあリスク犯してまで、保証するんだからそうでしょう。それにあるクラスの人からすればそんなに高くはないんじゃないか」
「だからって…ズルだろそんなの」
希の眼はジャスミンティーのような緑色の眼が光を集めている。女の話に集中しているようだ。
「…
女性がそう言うと、キキっと椅子が後ろへ引かれた。浩然は見ていないからわからないが、ぱたぱたという物が重なり合う音が聞こえる。もうここを出るんだろう。
浩然はなぜか後ろを振り向けなかった。後ろを振り向いたら、きっと忘れないだろう。追い詰められた人の顔が。裕福な人間の顔が。
「カンニングなんてやめた方がいいよね」
希はたぶんわざとそう言っている。浩然は苦虫を潰したような顔で希を見る。変に恨まれても知らないぞ。
「あ、そっか、カンニングは和製英語だからわかんないか。英語ならチーティング。チーティングはやめたほうがいいよ~て、…あれ、英語でもわかんないか。しょうがない受験生だなあ」
と自分のことは棚に置いて、頭をぼりぼりとかく。
やがて、席から離れ、女が出口へ移動していた。ちょうど浩然の真後ろに女がきた時、希が浩然の背後を見据えながら言った。
「
その言葉がおまじないのように、浩然は聞こえた。
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