第1279話 イゾウの敵対者の末路

「なんなんだこれは!!」

頭だけとなったミリターは困惑していた、全身の感覚はあるのに身体が全く動かない。


「関節ごとに転移して異空間に行ってもらっている、動くことは出来まい。」

「この程度、神威を込めれば!

ぎゃあぁぁぁ!!」

ミリターは神威を込めるが込めれば込めるほど激痛が走る。

「神威を込めれば転移で繋いでいる部分を削る事になる、無駄な抵抗はせぬほうが身のためだ。」

「おのれ魔道具の分際で・・・」

「まだ言うか、ならばお前の頭を肥溜めに捨てるのみだ。」

「肥溜めだと!この私にそのような恥を晒せと!」

「人を侮辱したんだ、お前も軽蔑される身の上になればいい。」

「や、やめろ!くそっ!身体の位置がわかれば!」

ミリターは自身の身体が何処にあるか探る、相手は転移の使い手とはいえ、所詮人である、転移する範囲にも限界があるはずであり、一級神でもある自分なら身体の位置さえわかれば呼び寄せる事も可能と考えるのだが・・・


「身体が見当たらない?」

「簡単に見つかる所に転移させるわけが無いだろ、転移を極めれば辿り着ける場所に置いてある。」

「どこだ!何処にあるんだ!」

「教えるわけ無いだろ、お前はこれから肥溜めの中で暮らすんだ。」

イゾウはミリターをとある世界の肥溜めの中に転移させる。


「ごぼっ!臭い!口に、鼻に入ってくる!」

ミリター手足が無い為這い上がる事も出来ない。

だが高位の神である為、窒息により命を失う事も無い。


「誰か!私を救いに来てくれ!」

ミリターは念話で知り合いに助けを求めるのだが・・・誰からも反応が無い。

代わりに近くから念話が届く。


「おう、新入りか・・・」

「何者!」

「俺はラズという神だ、お前もイゾウにやられたのか?」

「ラズ殿!どうか私を助けてください!」

「聞いてなかったのか新入り・・・

俺もお前と同じだよ、頭だけだ。」

「なっ!」

「ここはあの魔道具イゾウのゴミ捨て場だ、アイツに敵対・・・

いや、怒らせた奴が頭だけとなって捨てられる場所だ。」

「なんだと・・・貴殿はいつから此処に?」

「さあな、随分前だから忘れちまった、此処に放り込まれた奴は自身の神威が尽きるまで此処にいるだけだ。」

「神威が尽きるまで?」

「そうだ、この場所が何処かはわからないがこの場所は緩やかに神威を消費するようになっている、少しずつチカラを失い朽ちていくだけだ。

まあ、暫く話し相手になってくれ、もう長い間話し相手もいないんだ。」

「長い間、話し相手?」

「昔はもっといたんだぜ、だがみんな死んじまった・・・」

「昔・・・ラズ殿、もしかして数百年前に滅びた世界ラズマールの最高神ではございませんか?」

「懐かしい名だ、かつての私はどれほど愚かであったのだろう。」

「ラズマールは突如崩壊したとお聞きしましたが一体何が?」

「アキラの怒りをかった・・・

神の一人がイゾウとアキラを間違って召喚してしまってな、その結果がこれだ。

異世界召喚など認めるのでは無かった!」

ラズからは悲しみの感情が伝わってくる。


「私達の世界も今アキラとイゾウに攻められているのです、なんとかする方法はありませんか?」

「・・・無い、あれは嵐のような物だ、大人しく過ぎ去るのを待つだけ、無駄に争えば最高神として君臨していた私ですらこの有り様だ・・・

残念だがお前の世界も遠からず滅びるだろう。」

「そんな・・・」

「なに、悲しむ事は無い、近々お前の知り合いも此処に来るやもしれんからな、暫くは話し相手に困ることも無くなろう。」

ラズの言葉はミリターと同じ状態にされて放り込まれるという事である。


「誰か!私を、私の世界を助けてくれ!!」

ミリターの悲痛な願いは何処にもとどく事は無かった・・・

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