第704話 ワシントンにお願い

「ジョー、ちょっと頼みがあるんだけどいいかな?」

「いいぞ、なんでも聞こうじゃないか。」

「実はな・・・」

俺は南の国が俺のルーツだと言う話に辟易していると伝える。


「つまり、ヨシノブが生粋の日本人だと言えばいいのだな。」

「ああ、本来なら日本から言ってもらうべきなんだけど、あの国は日本の言うことなんて聞かないだろ?」

「くくく、たしかにそうだな、

アメリカ大統領として発表しようじゃないか、

何ならルーツをアメリカ人にしてもいいぞ。」

「ご先祖様に怒られるから勘弁してくれ。」

ワシントンの冗談に俺も軽く返す。


「それは残念だな、まあアメリカ人になりたければいつでも言ってくれ。」

「あはは、その時は・・・って、そういえば、地球での国籍ってどうなるのだろう?」

「地球での国籍?」

「俺、日本では死んでる事になっているんだよ、それだと日本の国籍が無くなっているよね?」

「そうなるのか?」

「わかんない、まあ地球に行ってないから国籍は問題になってないけど。」

「それだとこっちに来たときに困るかもしれんな、パスポートも用意出来ないだろ?」

「まあそうなるな。」

「よし、私が用意しておこう。

パスポートぐらいならいくつでも用意しよう。」

「ありがたい、地球に行ったときに使わせて・・・あれ、俺地球に行けるのかな?」

俺はふと思い出す、この身体はこちらで作られたものであり、地球に戻れないと聞いたような気がする。


「ヨシノブは地球に来れないのか?」

「どうなんだろ?アマテラスさんの加護があるから行ける気もするけど、一度確認したほうが良さそうだ。」

「確認って誰に確認するつもりだ?」

「アマテラスさん。」

「お前は神に質問する気か!」

一神教だったワシントンからすれば神とは敬う存在であり、簡単に声をかける相手では無いのだ。

「駄目なのか?」

「ヨシノブ、軽すぎる、神は敬うべき存在なのだよ。

そもそもどうやって話を伝えるつもりだ。」

ワシントンからすれば神とは遠い存在、話したいからと言って話せる相手ではない。


「アマテラスさんならちょこちょこハルノブに会いに来ているから、その時にでも聞いてみるよ。」

「・・・ヨシノブ、神との距離感がおかしくないか?」

「そうかな?親戚のおば・・・お姉さんって感じかな?」

「日本人とはそんなものなのか?

西欧人と信仰の仕方が違うとは聞いていたが、ここまで違うものとはな。」

「うーん、どうだろ、人によるんじゃないかな?

俺はたまたま会う機会があるというだけだから。」

「そもそも会う機会が無いのだがな・・・教会の者が聞いたら卒倒するぞ。」

俺はワシントンに呆れながらも電話を終える。


ワシントンは約束通り、ヨシノブの国籍が日本であることをアメリカとして保証することを宣言する。

そして、ヨシノブの妹カオリから預かった家系図も公開される。

これにより生粋の日本人ということが世界的に認められる。

ただ南の国だけはアメリカの陰謀論を展開したり、起源説を唱え続けるのだが、それを信じる者は他国にはいなかった・・・

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