第683話 最低な提案
「お金持ちって・・・スズいきなり何を。」
クラルは困惑している、まさか妹からお金の話を持ち出されるとは思ってもみなかったのだ。
「そんないい服着てるんだからお金あるんでしょ、それともお姉ちゃんっていうのは嘘で私達を騙しているの?」
「嘘なんかじゃない!私は桜川ハツネだよ!」
「なら私達をお金持ちにしてよ、家族だったらそれぐらいの融資できるよね?」
クラルは俺の方を見てくる。
魔王の妹でもあるクラルはこの世界だと金持ちになるだろう。
しかし、向こうに送る術は持っていない。
金持ちにしろと言われても無理なのだ。
「私じゃそっちに何も出来ないよ。」
「何言ってるの、源グループが私達を探すぐらいにVIPじゃないの、とりあえず、百万ぐらいお小遣いちょうだい。」
「百万って!なんでそんな大金をお小遣いにほしがるのよ!」
「だって、それぐらいないと、ブランド品買ったらすぐに無くなっちゃうじゃない。」
「ブランド品って、スズあなたまだ高校生じゃないの!」
「えっ、なに高校生はブランド品持っちゃ駄目なんて考えてるの?なにそれ?ないわ〜」
スズはクラルをバカにしたように言ってくる。
「お父さん!スズが変な事を言ってる、叱ってよ!」
クラルがカイに叱るように言うが・・・
「こらスズ、その話はまだ後から・・・」
「いいじゃん、どうせ言うんだから早いほうがいいに決まっているでしょ。」
「確かに、そうだが・・・」
カイは何かを考え込んでいるようだった。
「お父さん?どうしたの?」
「なぁ、あんた・・・いやハツネ、お前はハツネなんだろ?」
「な、なにお父さん、ちょっと目が怖いよ。」
「お父さん達に援助をしてくれないか、なに仕事が上手くいけばすぐに返せるからな。
ちょっとだけ援助してくれたらいいんだ。」
「お父さんまで何を言ってるの?
私は違う世界にいるんだよ、それなのにどうやったら援助できるっていうの?」
「そこのヨシノブさんならこっちに異世界の物を送れる筈なんだ、金・・・いや、異世界の物を送ってくるんだ、お父さんがそれを販売しよう!」
カイの目が血走っている。
「お父さん、何を言ってるの・・・
異世界から物が送れる訳ではないじゃない。」
事情を知らないクラルはカイが何を言っているか全くわからない。
「クラルさん、カイさんが言うように俺のチカラでこちらから物を送る事は出来ます。
しかし、希少金属などを送るとこちらの総量が減るのでそれは止めてもらいたいかな。」
「それならポーションだ!ポーションなら送っても問題無いんだろ!」
電話先で聞いていたのか、カイが叫び始める。
「少し静かにしてくれませんか?
クラルさんを転生したハツネさんと認めず、喰い物にしようとするのは見過ごせません。」
「なっ!だから家族の為に・・・」
「家族と言うなら、まずは再会を喜ぶべきだ!
それなのに何だ!
カネカネと!」
「いや、しかし、だな・・・
どう見ても娘じゃないし・・・
金が無いと店が・・・」
俺に気圧されたのか、カイの言葉が小さくなり、本音の部分が顔を出す。
「お父さん・・・」
クラルは娘と認めてくれない寂しさから再び涙が出てくる。
「クラルさん、すみません。
まさかこんな事になるなんて・・・」
俺はクラルに謝罪する、家族との再会を喜ぶはずが、認めないばかりか金の無心をしてくるとは思ってもみなかった。
「いえ、ヨシノブさんのせいでは無いです。
悪いのは私の家族・・・いえ、桜川家の方々ですから。」
クラルは涙を拭い、画面を見る。
身を正し、凛とした姿を見せ・・・
「本日は私のワガママで来ていただき、ありがとうございます。
私の家族はリリスお母様とサタナスお姉様と言うことが認識出来ました。
源アズサさん、私の為に準備していただき感謝致します。
この御恩は必ずお返し致します。
桜川家の皆さんも遠路はるばる、ありがとうございます。
先程あったご提案ですが、貴方方が認めないように私は桜川家の人ではありません。
したがって貴方方に従う謂われもございません。
最後に私の中にある、ハツネの言葉として・・・
お父さん、お母さん、先立ってしまってごめんなさい、スズ私の分まで親孝行してね、さようなら・・・」
クラルは別れの言葉をかけて電話を切った。
もっと話したい言葉があったのだろう、電話を切ったクラルは大粒の涙を流して崩れ落ちていた。
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