第682話 感動の再会?
拠点に帰った俺はすぐにアズサに連絡を入れる。
「転生者ですか?」
「ええ、桜川ハツネの家族で桜川カイ、桜川ハク、桜川スズという名前の家族を探して欲しいのですが?」
「わかりました、調査してみます。」
「お願いします。」
源グループの調査能力に期待して俺は任せるのだった。
数日後、アズサから連絡がくる。
「ヨシノブさん、見つかりました。
一年前に交通事故で亡くなられたハツネさんのご家族になります。」
アズサは用意した3人の写真を見せてくる。
俺の隣で確認していたクラルは涙を浮かべる。
「わ、私の家族です・・・
よかった、みんな元気そうで・・・」
「アズサさん、この方達と話すことはできるかな?」
「ええ、出来ますよ、事情を説明してますので良ければお会いになりますか?」
アズサは既に家族に説明をし終えていた。
亡くなった娘が異世界に転生したと言う、荒唐無稽な事に納得してもらうのに時間はかかったが、対談する事に了承は得ていた。
「クラルさん、どうしますか?」
「会います、会いたいです。
お願いします、どうか会わせてください。」
クラルはアズサに深々と頭を下げる。
「わかりました、誰かお連れしてください。」
アズサの指示で3人が画面に映る。
「お父さん、お母さん、スズ!」
クラルは画面に縋り付くように近づく。
感動しているクラルとは別に三人は特に反応が無い、それどころか困ったような表情を浮かべていた。
「だれ?こんな人知らないんだけど?」
最初に声を出したのは妹のスズだった。
「えっ・・・」
クラルが固まるのがわかった。
「こらスズ、すみません。娘が失礼な事を。」
母親のハクがスズの言葉を謝罪する。
「お母さん、私よハツネよ!なんでそんな他人行儀なの!」
「だってねぇ・・・」
ハクは戸惑っているのが見て取れるが、クラルにしてはショックが大きいのだろう。
感動の再会とは違う涙を浮かべていた。
「あー、ちょっと失礼。」
俺は見るに見かねて間に入る。
「あなたは?」
「俺はヨシノブと言います、異世界の騒動の元凶と言ったほうがわかりやすいですか?」
「ヨシノブさんですか、あの・・・」
度重なる騒動で良くも悪くもヨシノブは有名人になっていたのだった。
「はい、あのですね。
桜川家の皆さんはハツネさんの見た目がご存知の姿じゃないから微妙な反応をなされたのですよね?」
父親のカイが静かに頷く。
「見る限り、何処かの御令嬢のようだが、私の娘は普通の子だったんだよ。」
「確か見た目は違うと思いますが、どうかじっくり話して見てくれませんか、俺達がウソをついているわけでは無いとわかってもらえる筈ですから。」
俺の言葉に従い、クラルといくらか話はするが、桜川家の皆さんは見た目が御令嬢であるクラルに言葉を選んで丁寧に喋っており、クラルにとっては15年前の記憶であり、所々に忘れているところ、美化されているところがあり、中々上手く話が弾まない。
「あー、もうあなたがお姉ちゃんと言うなら、私に何かしてくれない?」
ぎこちない両親に代わってスズが提案してくる。
「スズ、何かって?何をしたらいいの?」
「そりゃ・・・お金よ、お・か・ね。
私達がお金持ちになるようにしてよ!」
「お金持ちって、言われても・・・」
スズの提案にクラルは困惑するのだった・・・
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