第666話 魔王と謁見

城に入ると謁見室に案内される。


俺を案内するようにフォルサとファイが前を歩き、

俺はシモ、パウルとオットーを連れて謁見室に入る。


「遠路ご苦労である。

我が魔王サタナスである。」

俺は魔王の姿を見て少し驚く、魔王というのだからイメージ的にバ○モスや、デス○サロのような異形の姿を考えていたのだが、そこにいたのは十代後半の女性であった。


「これはどうもはじめまして、ヨシノブと言います。」

俺は軽く頭を下げ挨拶をする。


「無礼な!!陛下の御前である、平伏せんか!」

謁見室にいる魔族から声が上がる。

「良い、騒ぐな。

遠路から来た客人に目くじらを立てる必要もあるまい。」

「陛下!人族を甘やかすとロクな事にはなりませぬぞ。」

「なに、寛大なところを見せてこそ偉大な王になれるであろう。

そんな些細な事より、我に貢物を持ってきたのであろう、早く差し出すがよいぞ。」


俺は言い方に引っかかりながらも、ケーキを十個程出す。

「フォルサが頼むから、贈り物として渡す。

これでいいな。」

俺の口調が変わった事に近くにいるファイは手を口に当ててアワアワしている。


サタナスの横に控えていた女性がケーキを取りにやってくる。

「人族が増長するでない、魔王様のお優しいお気持ちで生かされていることを忘れぬように。」

俺を威圧するように話しかけてくる。


「おい、ゴリオン、側付き風情が俺の友に難癖つける気か。」

声が聞こえたのであろう、フォルサが怒りの声を上げる。

「これはフォルサ公爵失礼致しました、ですが人族を友と呼ぶのは如何なものかと、おっと失礼。私は貢物を運ぶ役目がありますので。」

ゴリオンと呼ばれた女性は軽くフォルサを躱すようにそそくさとケーキを持ってサタナス元に戻る。


「これがケーキか、噂で聞いていたが奇麗なものだ。

さて1つ頂くとしよう。」

サタナスは眼を輝かせてケーキを食べる準備をしている、周囲の空気はあまりよろしくない。

「たかが菓子ごときで媚を売りおって。」

「人族が城に入るなど、許し難き罪だ・・・」

ボソボソと批判をしているのが聞こえる。

サタナスに聞こえているかはわからないが、サタナスは反応を示さずケーキに舌鼓をうっている。


「・・・おとうさん、殺りますか?」

オットーがボソリと聞いてくる。

既に懐に手を入れて銃を撃つ用意をしているようだった。

「まあ、待って、特に害された訳でもないし、フォルサの顔を立てて大人しく帰ろう。」

俺は明らかに怒っているオットーをなだめて、サッサと帰ろうと思う。

「それではお望みの物を渡しましたので、俺はこれで失礼する。」

「まあ、待て、貢物を受け取ったのだ、恩賞を渡してやろう。

そうだな・・・

よし、そこにフォルサの娘を妻にすることを許そう。

人族が公爵の娘を娶るなど本来許される事ではないのだがな、特別に許可してやろうではないか。」

「陛下、それは恩賞として認めるには大きすぎますぞ、人族など金貨を多少恵めば良いのです。」

「なに、フォルサの意向も組んでやらねばなるまい。

少々多いかも知れぬが今後も献上してもらう事を考えれば認めるのもそこまで悪くはない。」


サタナスとしては寛大な褒美のつもりであった、以前より、フォルサからファイとの婚姻の許可を求められていた。

しかし、人族のしかも何処の誰ともわからぬような相手との婚姻は安易に認めることは出来ない。

だが熱心に許可を求めてきており、今回の献上の礼に特例として認める形をとることにしたのだった。

ただ魔族側からは否定的な声が上がった。


そして、ヨシノブがそれを欲しているわけでもなく・・・


「遠慮します。」

アッサリ断るのだった・・・

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