第667話 騒動

俺が断りを入れると、横にいるファイが気まずそうに、そして、困った顔をしている。


「なんだと!これ程の優遇を断ると言うのか!」

サタナスは驚きの表情を向けている。

「そもそも、俺は既婚者ですから、妻を欲している訳ではありません。」

「これはおかしな事を、妻など何人いても良かろう。

我が父も38人ほど妻がいたが・・・」

「人それぞれでは?

俺は一人で充分です。」


「ぬう!それはファイ嬢に対する侮辱ではないか!陛下このような者を許す訳にはいきませんぞ!」

先程、婚姻を許可すると言った時に反対の声を上げていた者が今度は受けない事が駄目だと言い出す。


「えーと、貴方はどっちだったらいいんてすか?」

俺は思わず質問する。

「人風情がワシに話しかけるで無い!」

だが、どうやら逆鱗に触れたようで怒りが増すばかりだった。


俺はもう話にならないと謁見室から出ようとする。

「待て!まだ話は終わっていない。」

サタナスは俺を引き止めようとするが。

「別に報酬は入りません、フォルサに頼まれて来ただけですから。

魔族の方々には人族と話す気も無いようですので、これ以上話す必要も無いでしょう。

我々はこれで失礼します。」

「待て、話を・・・」 

サタナスはそれでも話をしようと声を出そうとするが・・・


「人族が魔王城に来て生きて帰れると思うな!

おい!出てこい。」

さっきから騒がしい魔族が指示をすると謁見室に兵士が入ってくる。


「アホガンテを袋叩きにしてやったようだが、魔王城でそれが出来ると思うなよ!

おい、アホガンテの仇だ、この者を討ち取れ!」

魔族の声に兵士が襲いかってくるが・・・


「静まれ!!兵士よ一歩でも動けばこの俺が相手になる。」

フォルサが周囲を威圧すると共に兵士を静止する。


「フォルサ、人族の肩を持つ気か。」

「ロシナンテ、お前が妻の父であったアホガンテの仇を討ちたい気持ちはわからんでも無いが、俺の客に手を出そうと言うなら話は別だ。」

先程から騒がしかった奴はロシナンテというのか・・・

俺はフォルサが間に入った事で状況を冷静に見る。

オットー、パウルは拳銃を抜き左右に狙いを定めており、

シモは刀を抜き・・・って刀身が伸び地面を這って、謁見室にいる全ての貴族と思わしき者の足元まで細く伸びている。

この子は何をするつもりなのだろうか。

俺は少し冷や汗がでる。


シモの行動は少し気になるが、さてどうしたものか・・・

俺の号令か、敵の攻撃で戦闘はすぐに開始されるだろう。

フォルサやファイの事を考えると安易に戦闘に入っていいか迷う。


「魔王様、私がヨシノブを呼びに行ったのは討ち取らせる為ではございません。

もし戦われるとおっしゃられるなら、このフォルサ信義の為にヨシノブ側となり戦わせてもらいます。」

「ぬぅ、フォルサ、魔族を裏切ると言うのか。」

「私は自らの信念に従うのみ、私を使い騙し討ちなど・・・

俺の誇りを何だと思ってやがる。」

フォルサは宣言と共に更に威圧をかける。


貴族の中には泡を吹いて倒れるものもいた。


「あれ?ファイ、フォルサの奴全方向に威圧してるよな?」

「そうですね、お父様は加減が苦手ですから威圧の方向を絞ることなんて出来ませんよ。」

「なんだろう、あまり怖くないかも。」

「はぁ、いいですか、ヨシノブさんはアキラさんの威圧を感じすぎて麻痺しているんです。

あの人の威圧は異常ですよ。」


「あのな、俺の後ろでノホホンと話すな・・・」

気がつくとフォルサが振り返り、呆れたように俺達を見ていた。

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