第645話 アシタの逃走劇

ムロと分かれたアシタは囲みを破る為、全力で戦っていた。

「どけどけ!死にたくない奴は道を開けろ!」

アシタの剛力で吹き飛ばしながら道を切り開いて行く。

普段なら臆した兵士が出て道が出来るのに・・・


「逃がすな!あれがカルラ様を追い立てた輩だ!」

「俺が討ち取る!」

一兵士に至るまで群がるように襲いかかってくる。


「コイツラどうなっているんだ!」

あまりの状況にアシタも困惑の色が隠せない。

「アシタ、このままで大丈夫なの?」

友であるノーイが心配そうに近づいてくる。

「大丈夫だ、コイツラがおかしいとはいえ、武勇はそれほどじゃない。

向かって来るならたおせばいいだけだ。

ノーイ、兵の指揮は任せた、俺は前面に集中させてもらう。」

アシタは兵士の指揮を預け、一人の戦士としてその武勇で道を切り開いた。


アシタは勘で道を選び、強者のいない所を選んでいた、今強者に遭遇すれば脱出が難しくなるのは間違いない。

そして囲みを破り森にさえ逃げ込めば、野盗上がりの俺達なら捕まることなどない。


「よし!抜けた!

森まで全力で走り込め!」

アシタはついに囲みを破る、かなり多くの兵士が討たれたがアシタにとってそんな事はどうでもいい、今は逃げる事が大事なのだ。


森まであと一息、入る直前、目の前森が爆発する。


そして、爆発はアシタ達の横から更に続く。

アシタは爆風で吹き飛ばされてしまう。

「な、なんなんだ、何が起きた・・・」

アシタは考えが纏まらない、もう森に逃げ込めれた筈だ・・・

なのにどうして俺はこんな所に転がっている。


アシタが前を見ると、人がバラバラになっているのが見えた。


時間は少し戻る。

マックスが攻撃を開始したことをロンメルは悔しそうに眺めていた。

「先にやられたか。」

マックスが町に取り付く以上砲撃を加えるわけにはいかない。

遠目で眺めるだけとなる。


ロンメル達とてカルラ、アルバート、フランツの仇を討ちたいのである。

仲間を追い詰めた奴らに復讐をしたかったのだ。

「ロンメル、敵軍が町から出てきているぞ!」

遠目で見ていると敵軍が戦っているのが見える。


「うん?部隊が分かれたのか?

・・・狙いは逃走か!

奴らを逃す訳にはいかない、俺に続け!」

ロンメルは戦車隊で逃走してきそうな場所に移動する。

「いつでも撃てるようにしておけ!」

距離こそあるものの戦車にとっては問題無い位置に待機していた。

願わくば突破してくることを祈りながら・・・


ロンメルの願いは叶う。


アシタ達の軍はマックスの囲みを破ったのである。

「来たぞ、狙いはいいな!

・・・撃て!!」

ロンメルの号令の下、一斉に砲身が火を吹く。

横から撃たれたアシタ達は爆風もあり、ほぼ全てが倒れている。

「残敵を掃討する、機関銃を放て!」

隊列も無く、ただ倒れている敵に向かい機関銃で

肉片に変えていく。


「誰一人生かすな!撃って撃って撃ちまくれ!」

ロンメルの非情な命令が木霊する。


兵士達に既に戦意は無いのだが、近づかないロンメル達に兵士の命乞いは聞こえない。


兵士達が肉片になるのに時間はかからなかった。

運良く肉片を免れた者を残してほとんどの者が物言わぬ肉の塊となるのだった・・・

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