第646話 アシタは・・・
アシタの軍を壊滅に追いやったロンメルは倒れている残敵掃討に入ろうとしていた。
「こいつ息があるな。」
「た、たすけてく・・・」
パン!
子供達は無慈悲に止めをさしていく。
「ロンメルくん、残敵掃討は我々に任せてもらえないか。」
子供達が掃討している中、ルマが到着してロンメルに話を持ちかける。
「ここは僕達で充分ですが・・・そうですね、ルマさんにお任せします。
ですが、気をつけてください、軍を指揮していた者が死んでいるとは限りません。」
ロンメルは残敵掃討に危険性も感じていた。
もし強者が近づいて来るのを待って奇襲をかけてきたら被害が出ないとは限らない。
ルマが引き受けてくれると言うなら任せてもいいだろう。
そして、ルマの顔を立てる意味もあった、ルマはビザ軍のナンバー2でもある。
その申し出を断り角が立つよりは、譲る事で恩を売る方が得策でもある。
「我が隊は残敵掃討を行う、誰一人生かすな!」
ロンメルが譲ってくれたことによりルマの隊は倒れている敵全てに槍を突き刺していく。
「槍はいくらでもある、全てに突き刺していけ!」
「俺達よりエゲツねぇな。」
生きている者を狙って弾丸を撃ち込んでいたロンメル達と違い、全ての敵兵の身体に槍が突き刺さる。
「・・・ふざけるなぁ!!」
ルマの兵士の何人かが吹き飛ぶのが見える。
「何事だ!」
ロンメル以下、ルマ達の視線も吹き飛んだ所に集まる。
そこにはアシタの姿があった・・・
「あれは三騎士のアシタ!
ここにいたか!」
ルマの声はどこか喜びに満ちている。
「ルマさん、あの相手に何か因縁が?」
「あれこそ、カルラ様を追い詰めた諸悪の根源!それを討てる機会が来るとは!
このルマ、これほどの幸運に恵まれるとは!」
「あれがカルラの仇か!全員戦闘態勢に・・・」
「ロンメルくん、ここは私に譲ってくれたのでしょう。大人しく見ていてください。」
「なっ・・・くっ!全員戦闘態勢のまま、待機だ!」
ロンメルは悔しそうに唇を噛む、先程の発言をこれほど悔いるとは思わなかった。
「ナブル、マーン絶対に奴を逃がすな!ここで討ち取るぞ!」
「「ハッ!」」
ナブルとマーンがアシタを挟み込むように仕掛ける。
「うっ!きたねぇ、一騎討ちも知らねぇのか!」
「私は一騎討ちを受けた気はない。」
「大人しく散るといい。」
アシタが文句を言うもナブルとマーンは気にも止めず攻撃を繰り出す。
アシタがどれほど早く槍を振るおうとも、両側から攻撃されると受けきれない、まして攻撃してくるのはナブルとマーン両名とも音に聞こえた猛者である。
アシタの身体に傷が増えていく。
「・・・まずいな、このままじゃジリ貧だ。」
アシタに冷や汗が流れる。
周囲を見ても味方になりそうな奴はいない。
捌ききれなくなったナブルの槍がアシタの右腕を切り裂く。
「観念するんだな。」
「・・あーもうわかった、降参、降参だ。
こんなの勝てねぇよ。」
アシタは両手を上げ、降伏をアピールする。
「何のつもりだ?」
「見てわからない?降参だよ。俺としては命をかけてまで連邦に尽くすつもりは無いし、それに俺の腕前は知ってるだろ?
マインズ王国でも充分通用すると思うんだよね。」
アシタは自分の武名に自信がある。
暫くは見張りが付くにしてもそれなりの待遇で迎え入れられるだろうと・・・
「本気か?」
ナブルは再度確認する。
「本気も本気、間違いないよ。」
「ならば、怪しい真似をするな。」
ナブルは警戒しつつ、アシタに近づく。
それに合わせてマーンも距離を詰める。
「そんなに。警戒しなくても攻撃したりしないよ、ほら武器も持ってないし。」
アシタは両手を見せて抵抗するつもりが無いことをアピールする。
今更戦った所で馬も無い今、逃げれる訳が無い。
さっさと捕まって檻でノンビリするか・・・
アシタはそんな事を考えながら、二人の接近を許していた・・・
グサッ!
ナブルとマーンの槍がアシタを両側から貫く。
「えっ?なぜ・・・」
アシタは困惑する。
既に降伏したのに何故コイツラは俺を殺す必要がある。
考えが纏らないがこのままでは死んでしまう。
アシタは必死で槍を抜こうとチカラを込めるが、右腕は切り裂かれ、両側から刺された状態ではチカラが入らない。
「ぐわァァァ、何故だ!何故俺を殺す必要がある!!」
「お前を生かす訳が無いだろう、カルラ様を追い立てておいて生き残ろうなど許される筈が無い。」
「卑怯者!それなら正々堂々と戦え!それでも武人か!」
「これはウジ虫共を駆逐する戦いなのだ、君はウジ虫と正々堂々と戦うかな?」
ナブルは降伏を受け入れるフリをして、手っ取り早く処分するだけだった。
「くそ!ぜってぇ許さねぇ!お前だけは殺してやる!」
アシタは叫び、身体を揺すり脱出しようとする、だがどれほど叫ぼうと貫かれた槍が外れることは無い。
声は次第に弱くなっていく・・・
「なぁ、頼む・・・このままじゃ、死んでしまう・・・助けてくれ・・・」
アシタは出血から目が霞んでくる。
「誰も助けない。最後の光景だよく見ておけ。」
ナブルとマーンはアシタを槍に刺したまま、高々と持ち上げる。
アシタが最後に見た光景は北の城壁が崩れ落ちていく姿であった・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます