第619話 ロンメルの我慢

マックスの進軍が早く、ロンメル達はまだ準備が出来ていなかった。


ヨシノブ自身に来てもらえばすぐに拠点と大量の戦車を配置することが可能だが、今回ヨシノブを動かす気は子供達には無かった。

子供達が操船できる船で輸送した上、拠点の設置をしているために時間がかかる。


マックスは既に軍がビザ領に滞在しており、カルラ経由で持ち込んだ大量の食料、手持ちの武器だけで突撃を敢行する身軽さから進軍開始までの早さは異常な程だった。


「ロンメル、遅れを取っているぞ。」

「落ち着けハンス、慌てて戦を始めても被害が出るだけだ、こんな時こそ落ち着いて対処すべきだ。」

「だが、マックスに全てを取られるぞ。」

「俺達がやるべきは憎き奴らの殲滅だ、マックスが代わりにやるというなら譲ってもいい。

一番大事なのは俺達に被害なく結果を得ることだ。」

ロンメル自身即座に突撃したい気持ちが強いのだが、一軍を指揮する以上、安易な突撃をするわけにはいかない。


「カルラも飼い犬のリードぐらいちゃんと握れよな。」

「ハンス、脳筋の悪口を言うな、あんな脳筋でも一応味方だ。」

「ロンメルも充分酷いぞ。」

「犬扱いよりはマシだろ。」

ロンメルとハンスが出撃出来ない悔しさから悪態をついていたが、部屋にもう一人フーゴがため息をつきながら二人を諭す。


「どっちもどっちだと思う。

それより、物資の確認を頼むよ。」

フーゴは資料をロンメルに渡す。


「まだ、弾薬類が少ないな、一戦ならできるが補給のことを考えるともう少し欲しい。」

ロンメルは届いた物資を確認しているがまだ心許無い量しかない、ヨシノブが来れば一発で解決するのだがヨシノブを動かすつもりは無い。

「はあ、今後の運用を考えると動かせる艦船を増やさないと話にならないな。

ヘルマンに上申しておくか。」

ロンメルはこの戦だけでない、今後の戦も考えて計画を立てる。


実際ロンメル以下最精鋭なら少ない弾薬でも効果的に戦い、勝つことは出来るだろう、だが新しく操縦を覚えたもの達に戦場を教える為には充分な補給を待つ必要がある。

ロンメルの頭の中では今後戦線が拡大していくことを踏まえて、今のうちに教育を進めることが重要視されていた。

その為に最前線をマックスに譲る事になる、ロンメル自身歯がゆい思いをしながらも、未来の為に今は我慢する時なのだと自分に言い聞かせていた。

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