第604話 タラニス対話

「タラニスさん、今一度庇護下に入れてもらうことはできないのですか?」

ガックリと肩を落とすワシントンを見て、俺はタラニスに声をかける。


「あなたはアマテラスの子ね、あなたにはわからないかも知れないけど、名前を忘れられた者の気持ちわかる?

まあ、信仰心をそれなりに払ってくれるから怒りはおさめたけど、それでもいい感情はもたないわ。

互いに無関心、これがいい関係なのよ。」


俺の言葉はアッサリと流される。

「そうですか・・・」

俺もあんまり反論することも出来ない、タラニスの気持ちもわからないわけでもない。


「うにゅ!おとうさんの言葉を流すなんてダメなのよ!」

シモが隣で怒り出す。

「こら、シモ今の言葉は仕方ないから。怒っちゃだめだよ。」

「にゅ〜でもでも、ダメなのよ、おとうさんは笑っているべきなのよ。」

俺の為に怒ってくれるシモに嬉しく思いながらも俺はシモを止める。


「あら、この子・・・」

タラニスはシモを見つめている。


「なるほど、アマテラスがこの子に肩入れするわけがわかったわ。

いいでしょう、私はアマテラスがこの地でやっていることを支持します。」

タラニスは以前のウカノミタマの一件を知っており、心を痛めていた一人であった。

アマテラスが力技で事を成すなら、その支援をするつもりだった。


「貴女が力を貸してくれるならありがたいわ、ゼウスやシヴァ、天帝辺りが騒いだときは協力してね?」

「ええ、わかったわ。

そうだ!そこのわが子よ、今後私の名前を広めなさい!

そうすれば、私が貴方達を庇護下におさめましょう。」

「本当ですか!」

「ええ、アマテラスの子に免じて今までの無礼は水に流してあげます。

必ず私の名前を広めるのですよ。」

「はい!お任せください。」

ワシントンとレオは深々頭を下げる。

そして、二人は高揚感を得ていた、それは親に認められた子供のようだった。


「ヨシノブ、先程から現れておる者たちは一体何者なのだ?」

ルーズは無条件に畏敬の念を抱く者達を疑問に思い、声をかけてくる。

「あの方達は俺の故郷の神様です。」

「なんと!神だと!」

「ええ、この世界の神とは違いますが。」

「そのせいか、あの御方を見ると震えが止まらん。」

ルーズは手の震えを俺に見せてくる。


「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ、あの方は意味なく人を傷つけたりしませんから。」

「本当なのか・・・」

「優しい方ですから。大丈夫です。」

「ヨシノブは普通と違うとは思っていたが、まさか神と繋がりがあろうとは・・・」

ルーズは恐れながらも感心するのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る