第561話 冒険者ギルド

「な、何事ですか・・・」

冒険者ギルドは騎士団に囲まれ、混乱状態に陥る。

その中で長年受付を勤めてきたナスイが代表して表にいる騎士団に問いかけに行く。


「冒険者ギルドのマスター、ビワンを国家反逆罪として処断した、冒険者ギルド自体が加担している可能性があるため、これより家宅捜索を行う。」

「マスターが国家反逆罪?ありえません。」

「何を言うか!ビワンがマインズ王国とヨシノブ殿を争わせようとしたことに疑いはない!

このマックスを奸計にかけようとは・・・愚かにも程がある!」


「マックス様、誤解にございます。

マスターにそのような考えは無く、本日うかがいに行きましたのはギルド内での殺人事件につきまして、訴えを・・・」

「黙れ!先に剣に手をかけ殺そうとした者を殺した事は正当防衛である、それを何故俺が再度調べねばならん!

見たところ職員のようだが、やはり組織として何らかの動きがあるようだな。

これより家宅捜索を開始する。

抵抗するなら斬っても構わない。」

「「ハッ!」」

騎士団による家宅捜索が行われる。


「やめてください、冒険者ギルドは非干渉のはずですよ!」

家宅捜索を開始すると職員が必死になって止めようとする。

「職員すべてを捕縛せよ、こいつらも容疑者である。」

マックスは職員の声を聞くことなく捕縛の命令を下す。


「団長、こちらに国内の兵力について書かれた書類があります。」

「こっちは砦の一覧と内部構造が・・・」

「こっちは脱税だ、収益を誤魔化して脱税してやがる。」


冒険者ギルドが政治に関わらないというのは建前であった。

魔物討伐の名目の元、国内各所の情報を集めており、ギルド本部があるヒンメル帝国に集めていた。

情報はヒンメル帝国に売り渡されており、冒険者ギルドの裏資産となっていた。


「真っ黒だな・・・

職員全てに国家反逆罪の疑いがある。

また冒険者達も取調べの対象だ!

少なくとも高位冒険者は指名手配とする。」

マックスはギルド内にいた職員と冒険者を捕縛、この日、ギルドにいなかった高位冒険者を指名手配とした。


「陛下、冒険者ギルドがヒンメル帝国の諜報機関でございました。」

マックスは証拠を持ちルーズに報告に上がる。

「な、なんだと。」

「これが証拠にございます。

奴らは魔物討伐を行いつつ、国内を調べ上げていたようにございます。」

「これは・・・」

ルーズは絶句する。

魔物を討伐するのに軍の兵力、配置を知っておく必要は無い、このような情報が他国に持ち出されれば、攻められたときどれほど不利になるか、考えるだけでも恐ろしかった。


「陛下、これを機に冒険者ギルドを廃止致しましょう、魔物討伐は騎士団で充分に対応可能にございます。」

「うむ、このような組織を野放しには出来ん、即刻国内全てのギルドを閉鎖する。

だが騎士団の負担が大きくならないか?

冒険者ギルドに代わる新たな機関を立ち上げるが?」

「いえ、魔物との戦いは良い訓練になります。

やはり命のやり取りをしなければ強くなれませんから。」

強くなった騎士団にとって魔物を狩ることがそれほど難しくなくなっていた。

それどころか魔物の素材は高値で売れ、騎士団の臨時ボーナスになるため、騎士団員にとっては嬉しい話であった。


「マックスには苦労をかけるな・・・

よし国内の事を第三者に任せる訳にはいかない、冒険者ギルドを廃止した上、騎士団が魔物の討伐を引受ける。」

ルーズは国内に通達を回す、その上で他国にも冒険者ギルドがヒンメル帝国の諜報機関であることを伝える。


だが、各国はすぐに魔物の討伐を騎士団が対応することは難しく、ヒンメル帝国に情報が流れつつも冒険者ギルドの廃止とまではいかないのだった。

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