第538話 モトキ捕まる。

「何故私が牢屋に入らねばならん!!」

固まっていたモトキが回復してすぐに叫ぶ。


「わかりませんか?」


「わかるはずが無いだろう!さては冤罪を被せるつもりだな!

そんなことをしたら日本政府が黙っていないぞ、そうだろフユさん。」

モトキは黙って立っているフユに問いかけるが・・・


「日本政府はこちらで起きる全ての事柄に不干渉と決めております。」

フユはアッサリとモトキを切り捨てる。


「不干渉?冤罪でもか!」

「本当に冤罪ならクレームの1つぐらいは伝えますが実際に何かすることはありません。」

「せ、政府の怠慢だ、政府には日本人を護る義務があるはずだ。」

「そうですね、日本人を護るためにもここでの事は不干渉なのです。

まあ、そもそも冤罪でもありませんし、この議論は不要ですね。」


「私がどんな罪を犯したというんだ!」

モトキはフユが助けてくれそうに無いと悟り、俺の方に向け直す。


「まずは購入能力もないのに契約を交わした不法取引。」

「それなら返せばいいだけだろ!」

「そういった話でもないんだけど、まあ次は屋敷の物を勝手に取って売った窃盗罪かな、まあこの2つだ。」


「た、たいした罪では無いじゃないか!」

「そう思うのは自由だけど罪は罪だからね、はい、騎士さん連れて行ってくれるかな?」

俺はあらかじめ呼んでおいた騎士団にモトキを連行してもらう。


「くっ、離せ!こんな軽い罪に何で騎士が来ているんだぁ・・・」

モトキは逃げられないように厳重に縛られ、連行されていったのだった。


護送車の中で・・・

「なぁ騎士さん、俺はどれぐらい牢屋に入るのか?」

「なんだ?お前は罪の重さも知らんのか?」

「罪って言ったって、不法取引と窃盗だろ、物も売却した金も返したらそんなに重くならないだろ?」

「う〜ん、俺は裁判官じゃないからハッキリ言えんが・・・」

質問をされた騎士は言葉を濁している。


だがもう一人の騎士が軽く笑いながら言う。

「お前もわかってるだろう、コイツの処罰なんて1つじゃないか。」

「おい、罪人に伝える話でも無いだろ?

それに裁判結果は裁判官が決めるもので・・・」

「いや、間違いないね、それに至るまでの過程はどうあれ、結果は変わらないね。」

笑っている騎士は処罰の予想にかなり自信があるようで、もう一人の騎士も否定しつつも同意しているようだった。


「なんなんだよ、教えてくれてもいいじゃないか。」

モトキは言い淀まれると余計に気になった。


笑っていた騎士がモトキに伝えてくる。

「お前は死刑だよ。」

モトキの目が点になるのであった。

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